お金もかからず、道具もいらず、いつでも気軽にできる効果的な運動。
それが、ウォーキングです。
当院では、お身体の血行改善、良質な睡眠、ストレス発散、などの為にウォーキングをすることを大変お勧めしております。ところが!ただダラダラ歩くのとちょっとポイントをつかむかどうかでその効果は雲泥の差です。
でもいったい、どこに気を付ければいいの?
そうです、よくぞ聞いてくれました。
「なんだかネットや本では姿勢や足の運、気にするところがたくさんありすぎて困る」
そうですそうです、困ってしまいますよね。
もちろん、最低限スッと姿勢を伸ばして、やや速足で、ということは大切です。
でもそれだけではなく、1つ気を付けるだけでその効果はガラッと変わります。
結論から言いましょう。
是非お勧めしたいことは、足を踏み出す時に『少しかかとをお尻に近づける』です。
歩く時、片足ずつ前に出していきますよね?その前に出す時に、ただぼんやり前に踏み出すのではなく、かかとを少しお尻に近づけるのです。もっと言うと、お尻の穴に向けて踵を持ち上げます。膝上げのような大きい形ではなく、ほんの少し、5~10cm程度で良いです。
なぜなのか。それは、インナーマッスルで有名な「腸腰筋」が関係してきます。少し筋肉の話をさせてください。
足を踏み出す時に股関節を曲げる筋肉は大きく2つあります。
「大腿四頭筋」と「腸腰筋」です。どちらも大きく力強い筋肉で、股関節を曲げる時に力を発揮します。特に腸腰筋はさすがに注目されているだけあって、身体の奥深くにあって目立たないながらも、きちんと使えるとものすごく良い効果をもたらしてくれます。
『プロメテウス解剖学アトラス解剖学総論/運動器系』より引用
腸腰筋の利点
・内臓のすぐ裏を通っているので使うだけで内臓マッサージになる
・上端は横隔膜とくっついているので呼吸が深くなる
・インナーマッスルなので安定した体幹を作ることにつながる
・太い筋肉なので基礎代謝が上がる
などなど、たくさんの利点があります。ですが、これを使えていない方が非常に多いです。
腸腰筋を使わずに歩くとどうなるでしょうか? もう1つの股関節を曲げる筋肉、大腿四頭筋がサポートしてくれます。しかしこの筋肉、本来の主な力は「膝関節を伸ばすこと」です。スクワットなどでムキムキになる、あの太ももの筋肉が大腿四頭筋です。
こいつが代わってくれるならいいじゃんと思うかもしれません。では、この筋肉の本来の役割を果たしながら歩いてみましょう。さぁ、膝を決して曲げずにいつものように歩いてください。
どうですか?とても歩きにくいでしょう。
床につま先をすってしまう方も多いのではないですか?つまり、腸腰筋を使わずに大腿四頭筋をメインで歩くと、半分この状態になってしまうのです。つま先をすって転びやすくなる、ロボットみたいにバランスがとりづらくなる、バランスがとりづらいと疲れやすくもなります。
それを変えたい。腸腰筋をメインに歩いてみたい。そう思った方にお勧めなのが、冒頭に話した、『足を踏み出す時に踵を少しお尻に近づける』です。
踵をお尻に近づけると、自然といつもよりも僅かに膝が曲がります。すると、膝を伸ばす力を持っている大腿四頭筋は緩まなければいけなくなります。そのうえ、足を前に出す前後運動だけでなく、踵が上がることで上下運動が強まり、より腸腰筋が力を発揮しやすい状態が作れるのです。
あんまり変わらないでしょ、と思いますか?ものは試しです。まずは一歩一歩踵をちょっと上げながら歩いてみましょう。すぐにはわかりにくいかもしれませんが、だんだんと足が上げやすくなり、ポンッポンッと踏み出しやすくなってくるはずです。そうなってくればしめたもの!歩くこと自体が楽しくなってくると思います。
日々のウォーキングにちょっとだけポイントを足して、効果的に、そして楽しく歩きましょう。
おさらい
足を後ろから前へ踏み出す時「踵をお尻へ近づける」!!
お尻の穴へ近づけるイメージを持つとより良いです。
ウォーキングをやったことのない方も是非始めてみてくださいね。
《参考文献》
「究極の身体」高岡英夫、講談社+α文庫
「運動療法のための機能解剖学的触診技術」林典雄、メジカルビュー社
「プロメテウス解剖学アトラス解剖学総論/運動器系 第2版」坂井建雄、松村讓兒(監訳)、医学書院
鍼灸師 西村 亮二
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