PCOS（多嚢胞性卵巣症候群）と不妊鍼灸

2022年2月18日2023年12月15日

先日、アキュラ漢方より PCOS（多嚢胞性卵巣症候群）についてのブログを配信させていただきました。
今回は不妊鍼灸治療を担う鍼灸師の目線で、このPCOSについての考察をシェアさせていただきたく思います。

PCOS（多嚢胞性卵巣症候群）とはたくさんの卵胞が一斉に育ち、主席卵胞ができにくい状態。排卵までの時間が通常より長くかかったり無排卵であることも。そのため生理周期が長くなり時には無月経になることもあります。
「両方の卵巣に各10個以上小卵胞が認められる、AMHが6.0以上、無月経・希発月経、高LH、多毛、肥満などの特徴がある」と、教科書的には定義されています。

PCOSは症候群であって病気ではありません。しかし子宝を望む方にとってはハードルとなることが多々あり、不妊に悩む方の6~8%位はPCOSであるとも言われています。

欧米における典型的PCOS患者像は「肥満、耐糖能異常≒インスリン抵抗性（高インスリン、高血糖など）、男性ホルモン過多」であるといわれます。

しかし日本人の患者様は必ずしもこれに当てはまらないことがあります。
実際に当院へお越しになる多くの患者様は華奢でほっそりとし、高血糖・高インスリンなどを連想させるような感じではありません。
またPCOSをもつ患者様が上述の定義すべてにあてはまるかというとそうでもありません。
「生理周期が40日超えなければ問題ないとドクターから言われたけれど、32日とか38日とかバラバラ。」「AMHは6まで行かないが、ネックレスサインがあると言われた」「周期によってはPCOSっぽいと言われる」という方もいらっしゃいます。

PCOSにお悩みの方々にお尋ねすると高い割合で共通すること

幼少期あるいは思春期から20代頃、かなり激しくスポーツをしていた
激しく運動（活動）している割に睡眠不足だった（3~5時間など）
社会人になり業務多忙、長時間残業や徹夜で働くことが頻繁にあった
食事が不規則、思春期から厳しいダイエットを行った
競争、対人関係などでストレス負荷が高かった　等…

これほど医科学が発展発達しても生殖医学はまだまだ謎に満ちています。
PCOSも例外でなはく、「欧米型」と上述した「肥満・インスリン抵抗性」タイプと「視床下部～下垂体～卵巣系の異常」タイプが仮説として挙げられていますが、原因や機序が完全に解明されているわけではありません。

適度な運動は健康にとって必須ですが、過度になると男性ホルモンが増え女性にとってはホルモンバランスの乱れに繋がりかねません。睡眠不足により間脳視床下部・脳下垂体が正常に機能しなくなり、自律神経・ホルモンバランスが乱れる可能性があります。
無理なダイエット、不規則な食生活は血糖値のコントロールを困難にします。
ストレス負荷が高いとこれもまた自律神経・ホルモンバランスの乱れに繋がります。

これらの生活習慣により必ずしも「PCOS」になってしまうというわけではありませんが、かなりの割合でPCOS患者様に共通しており、関連性があることは否定できないのでは？と感じています。もちろん 生活習慣の乱れは、性差を問わず子宝を望む方にとって大敵 であるのはいうまでもありません。

私共の鍼・漢方治療を受けるとともに、睡眠、食事、運動、ストレスマネジメントの改善に力を入れPCOSが改善し自然妊娠が叶った方、卵質が改善され胚盤胞を凍結できるようになった方が沢山いらっしゃいます。

PCOS（多嚢胞性卵巣症候群）の鍼灸治療

PCOSの最大の問題は２つあります。

1）体外受精で採卵する場合、未熟卵が多い（MIIという成熟卵がすくない）、受精卵が少ない、卵の質が悪い
2）自然妊娠や人工授精（AIH）をトライしている場合は、排卵日が特定しずらい（いつ排卵するか分からない）

この2点が問題となります。

１）については沢山卵が育ってしまうので、育卵治療をしっかり行っていくこと。
２）については、しっかり排卵するよう、排卵を促進させるための鍼灸を行い、タイミングを合わせる日時や人工授精を実施する日ごろにしっかり排卵するよう鍼灸刺激を加えていきます。

PCOSでお悩みの方、PCOSかも、とお感じの方、どうぞ1日も早くご相談下さい。

また、当院では漢方薬店を併設しておりますので、鍼灸と同時に漢方のお買い求めいただけます。特にインスリン抵抗性が強い方は漢方を併用することで、自力で排卵できるようになり、質の良い卵も育ちやすくなります。

一緒に解決してゆきましょう。

鍼灸師　鈴木麻希子