胚盤胞まで育てるかどうか、ドクターに選択肢を与えられても、選択を考慮するだけの知識がないため、どうしてよいのか、迷われる人は少なくないのではないかと思います。また、自分の決断が正しかったのか、そうでなかったのか、その決断を後悔したり、そのことについて、何度も考え込んでしまわれる方もいらっしゃいます。
あとは、凍結の問題ですね。新鮮胚移植をするのか、凍結してからまた後で移植するのか、正解はありません。
その時々の状況から判断して、決定することになります。
様々な論分から、初期胚よりも胚盤胞移植の方が妊娠率は有意に高くなることが分かっています。ですから、妊娠率を考えると胚盤胞移植の方が好ましいことは明らかです。
しかし、下記に示す2点については、胚盤胞はデメリットになる可能性があるため、十分考慮にいれたほうがよさそうです。
1)胚盤胞にならなければ移植ができない
これはどういうことがというと、培養を進めていくと、4分割、8分割で分割が停止したり、分割がうまくいかないため、胚盤胞まで分割が進まないことを意味します。自然周期で1個、2個採卵しても胚盤胞に至らないため、移植すらできず、治療が進まないケースがあるかと思いますが、それに該当します。移植しなければ妊娠はしません。
但し、胚盤胞にならないのならば移植しても同じではないかと思われるかもしれませんが、体外で胚盤胞にならなくても体内なら胚盤胞になるケースはあるのではないかという考えもあります。現在の培養システムは体内の環境を極限まで真似て行われているため、体外と体内でどちらが優れた環境かというとそれは体内かもしれないということです。
高齢で体外で胚盤胞ができいない方は初期胚で移植をして体内で育てる方法が好ましい場合もあります。胚盤胞まで育たないため、転院し、4分割胚移植で妊娠出産されているかたが沢山いるのはこのためです。
2)胚盤胞は内腔に水が入り拡張しているため凍結融解に弱いということ
初期胚と胚盤胞の大きな違いは、胚盤胞は発生の過程で構造的に内腔に水が入り拡張してきます。凍結は瞬間的に脱水させ、融解の場合にはその逆のことを行います。胚盤胞を融解しても凍結前の様に拡張せず収縮が続く場合がありますが、そのような時は凍結胚盤胞移植に適していない胚であると言えます。
初期胚を移植するのか、胚盤胞を移植するのかは上記のデメリットも考慮の上、決められるとよいでしょう。
全員に共通する成功の方法というものは残念ながら存在しません。患者様一人ひとり、そして、一つ一つの症例の経過を観察し、個別に対応していくことも大切なのかも知れません。
執筆者紹介
アキュラ鍼灸院院長 徐 大兼(じょう たいけん)
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