黄体機能不全と不妊

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黄体機能不全って?

黄体とは、卵胞から卵子が排卵した後にできる袋みたいなもので、実際に黄色く見えるそうです。
黄体はプロゲステロンを分泌し、そのホルモンにより子宮内膜が成熟化して着床しやすくなります。
黄体機能不全は、排卵後にできる黄体が正常に働かない状態です。

通常、成熟した卵子が飛び出したあとの卵胞は、卵巣内に残されたまま黄体に変化し、プロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌します。プロゲステロンには、子宮内膜を成熟化させて受精卵を着床しやすくし、着床後は妊娠を維持する働きがあります。しかし、黄体が正常に機能しなくなると、プロゲステロンの分泌が不足して着床準備ができなくなり、受精卵を受け入れられません。その結果、妊娠しない、着床しても流産しやすいなど、不妊原因となります。

症状・検査

これといった自覚症状はありませんが、基礎体温に影響が出る場合が多く、高温期が短い、低温期と高温期との差が小さい、高温期の体温が安定しない、などの状態が見られます。排卵から次の月経までの期間が9日以下と短い場合は、黄体機能不全が疑われます。また、血液検査で高温相の中間期(高温になって7日目位)に採血をしてプロゲステロンの濃度を測定します。値が10ng/ml未満の場合に黄体機能不全と診断します。ただプロゲステロンも日内変動をするため、1回の値で確定せずに少なくとも2周期続けて測定する必要があります。さらに、黄体期の子宮内膜の組織検査を行い、その組織所見が月経周期の日付と合致しているかどうかによって、子宮内膜がプロゲステロンの影響を適切に受けているかどうかを判断することができます。

原因

卵胞から黄体への変化をコントロールする脳の視床下部や下垂体の異常、黄体自体のトラブル、子宮内膜の反応の悪さ、高プロラクチン血症など、いろいろな原因がかかわっています。しかし、このような機能異常がなぜ起こるかについては、明確なことはわかっていません。

治療

① 黄体賦活法

hCGの注射を排卵期と黄体期に注射し、黄体から内因性のプロゲステロンを産生させる方法です。自分の黄体自身にプロゲステロンを出させるようにします。これによりプロゲステロンが上昇しその結果体温が上昇します。

② 黄体ホルモン補充

黄体ホルモン製剤を投与して補充します。内服と注射があります。内服は高温相の2日目から内服を開始して10日間程度用います。注射は高温相の中ころに行います。
内服→デュファストン、ルトラール、プロベラ、ヒスロンなど
注射→プロゲデポー

③ 卵胞発育促進(クロミフェンを用いる)

卵胞の発育過程に問題がある場合は、排卵前に排卵誘発剤を投与します。クロミフェンの内服により良い卵胞が出来るため、排卵後に卵胞が黄体に変わり、良い黄体が出来ます。その結果黄体ホルモンが増加して黄体機能不全の治療にもなります。

また、LUF(黄体化未破裂卵胞)を知っておくといいかも知れません。
LUFとは、基礎体温で体温が上昇しているにも関わらず、実際は卵胞が破裂していない状態を黄体化未破裂卵胞(LUF)といいます。また、卵胞から排卵しないままに黄体形成を認める事を言います。

普通は14日目ころ卵胞が20mmに達すると卵胞から卵が排卵します。その後空の卵胞が黄体というものに変わります。そして黄体はプロゲステロンを分泌して視床下部の体温中枢に作用して体温が0.3度位あがってきます。
しかしLUFとはその排卵がうまくいかず、卵子がが卵胞内に残ったまま、黄体形成を認める事を言います。内分泌学的には黄体化現象を示しますのでプロゲステロンは上がりその結果体温も上がります。

LUFは、「PCOS」「子宮内膜症」「骨盤内感染者」「骨盤内手術経験者」などの人に多く見られますが、その他にも原因不明不妊(機能性不妊)の一因と考えられ、その発症頻度は不妊患者の13~18%程度になります。

※LUFは未だ不明な点が多く、文献やあるいはインターネット上でも情報が少なく、今後の研究に課題を残していると言えるでしょう。

診断

① 排卵前から排卵後にかけて慎重に超音波診断を行なうことで確認していきます。

② 腹腔鏡検査ではstigma(破裂孔:卵胞の破裂部位)の有無で、LUFを確定できます。

原因

① LHサージの不十分

下垂体から分泌される「LH」や「FSH」に何かしらの異常が起こり、結果として不十分な「LHサージ」は黄体機能不全やLUFを引き起こす原因とされています。

② 非ステロイド性消炎鎮痛薬によるプロスタグランジン合成障害

痛みや炎症を抑えたり、リウマチの薬である、「インドメタシン」や「非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)」の投与を続けていると、LUFを引き起こしやすいことが報告されています。
これらの原因は排卵の関わる「プロスタグランジン」の生産を、「インドメタシン」や「非ステロイド性消炎鎮痛剤」が抑制して、LUFを誘発すると考えられています。

※ちなみに排卵時期に鎮痛剤を飲んだりボルタレンの座薬を使用するとLUFになりやすい事がわかっています。妊娠を希望する女性は排卵日には鎮痛剤を飲まない方が良いという事になります。この鎮痛剤とLUFの効果をうまく利用して、採卵の際にボルタレンを使用すると排卵を防いで採卵まで持たせてくれるという効果があります。排卵抑制目的にボルタレンを処方するクリニックがあるのはこのためです。

③ 子宮内膜症による癒着

卵巣周囲に癒着があることで物理的に卵が外に出れない事が多い。

LUFを繰り返す長期の不妊の対策

① 腹腔鏡下に卵巣周囲の癒着を剥離する。

② 体外受精:手術を希望しない場合。

※LUFと似たような卵胞異常に、「Empty follicle」があります。これは卵胞はしっかりと成熟しているのに、その中に卵が存在しない状態です。Empty follicleの原因は不明で、卵の過熱や変性、吸収などが考えられています。また卵は存在するものの、排卵が起こらない病態を「Ovum retention」と呼びます。

基礎体温がみだれる方、月経が短かったり少なかったりされる方は一度専門医を受診されることをおすすめします。また、当院の育卵治療により、子宮動脈・卵巣動脈の血流をよくし、卵胞の発育や内膜の増殖・成熟化を促します。
鍼灸の門を一度叩いてみるのもいいかもしれませんね。

鍼灸師 安田 直子

参考文献
両角レディースクリニックブログ
「はじめての妊活スタートブック赤ちゃんがほしいときに読む本」 ナツメ社
「不妊治療ガイダンス 第3番」医学書院

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