OHSSと鍼灸治療

妊活応援ブログ

卵巣過剰刺激症候群(OHSS=Ovarian HyperStimulation Syndrome)

不妊治療をしていると、おそらくほとんどの方が一度は聞いたことがあるのではないか、というこの言葉。実際に、当院の患者様でも聞かれることがあります。

さて、これは一体どういう状態なのか。鍼灸ではできることがあるのか。紹介していきます。

OHSSと鍼灸治療

目次

OHSS:卵巣過剰刺激症候群とは?

言葉の通り、排卵誘発剤などによって卵巣内の卵胞が過剰に成長してしまい、卵巣が腫れ上がってしまうことによって起こる一連の症状のことを指します

原因は?

・排卵誘発剤による過剰な卵胞の発育(hMG-hCG療法のことが多い)
PCOがあり、もともと卵胞がたくさん育ちやすい
薬に対する反応性が良く、思わぬ成長となってしまった(若い方が多い)

上記3つが主に言われる原因で、また、私たちも臨床でよく出会う原因でもあります

どんな症状?

主な症状は

腹水貯留による腹部の膨満感
腹痛、腰痛
・歩く時に卵巣のあたりが響く
・吐き気

これらが特によく見られる症状です。他にも

・急な体重増加
・息苦しさ
・尿量減少

といった各種の症状があります。

お腹に水がたまるのはなぜ?

上述したように、ほとんどの症状は卵巣が腫れてお腹に水がたまった為におこります。卵巣内で卵胞が育つ・排卵する為には血管が新しく作られたり血管の浸透圧(どれくらい水分の移動があるか)の変化が激しく起こります。

少し難しい言葉ですが、VEGF、サイトカイン、レニン-アンギオテンシン系、といったタンパク質やホルモンがたくさん出ることにより上記の血管に関する作用がより活発化します。

これが過剰に起こり、卵胞の過剰発育→卵巣の肥大→卵巣の血管からお腹の中へ水分がたくさん漏れ出てしまい腹水の貯留、となるのです。

普段はここまで水分がたまることはないので、非常にお腹が張っている感覚になったり、内側から圧迫されることによる気持ち悪さが出たりします。

また、血管から“漏れ出て”いますので、血管の中の血液は水っぽさが抜けて濃い血液となってしまいます。それが原因で、血栓(血の塊)ができてしまったり血液濃度の異常による体調不良を起こすこともあります。

正常な生理周期には必要な作用が、様々な原因により過剰になってしまうことでこれほどまでの症状・状態となってしまうのです。

治療法は?

お薬での治療となると、カバサールというドーパミン作動薬が有効です。こちらは、先ほど話したVEGFを抑制する働きがあると考えられていて、各種症状を抑える方向に働いてくれます。
しかし、実際に患者様とお会いしていると保存療法であることがほとんどです。正常な働きがお薬によって過剰になっている状態ですので、それを治るまで待つ、ということです。

鍼灸治療では何かできる?

鍼灸によって直接OHSSを治療することはできませんが、症状の緩和に一役買うことができます。
まず、何度も話に挙がっている腹水という余計なお水。こちらは身体の表面から対処することはできませんが、全身的な血流促進を行うことによって間接的にこの水分が抜けやすくなるよう、サポートをすることができます。

また、お水の処理と生殖器に関連する経絡を刺激し、痛みの緩和・回復促進もしていくことができます。
さらに、PCOSの患者様への鍼灸に関する論文ではOHSSになる可能性が低下することも示唆されており、予防にも有効であると考えられます。

気血の流れを整え、回復を促進し、血流を良くすることで、間接的に腹水が抜けることを助ける。全身治療である鍼灸だからこそできることが多々ございます。
まずは医師の指示に従ってご自宅で安静などが大切ですが、外出できる体調であれば鍼灸でお手伝いできることがありますので是非お声かけくださいませ。

OHSSに関連して、下記ブログも是非ご覧ください

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hCG投与について 追伸事項
PCOSの場合、体外受精の治療前にピルを用いることは妊娠率の低下を招く

鍼灸師  西村 亮二

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