言わずとしれた当帰芍薬散。婦人科疾患や不妊治療と言われれば当帰芍薬散が処方されることが多くありますが、私たち東洋医学者からすると「まずはとりあえず当帰芍薬散」というのは悲しい処方です。
以前、「風邪には葛根湯でいいのか?」というタイトルで書かせて頂きましたが、漢方も東洋医学であり、人それぞれの状態に合わせた方剤が処方されてしかるべきです。
当帰芍薬散(ツムラ23)
生薬: 芍薬(しゃくやく)、当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)、沢瀉(たくしゃ)
効能: 血が足りず滞ってしまう、身体に余分なお水が溜まって滞っている方に対して
漢方は組み合わせ
芍薬・当帰・川芎 ⇒ 血(けつ)を補充し、巡らせていく
茯苓・白朮・沢瀉 ⇒ 身体の水はけを良くする
それぞれに個性
芍薬 ⇒ 血をためる貯蔵庫の役割も兼ねている「肝」という臓器を補います
当帰 ⇒ 養血活血といい、血を補い、さらにながしていく作用。血病の要薬!
川芎 ⇒ 血の滞りをとることを得意とし、頭痛の良薬でもあります
茯苓 ⇒ 消化機能の統括をしている「脾」という臓器を元気づけ、水はけを良くします
白朮 ⇒ 健脾の良薬。脾の気の力を強め、漢方の吸収も良くさせてくれます
沢瀉 ⇒ 茯苓の水はけ作用を強化します
婦人科によく効くのは事実
貧血と言われる、生理痛がある、血行不良がある、むくみやすい、といった症状がみられるのは女性に圧倒的に多いです。だから多くの女性に当てはまり、また、当帰などの婦人科に著効な生薬が入っているのでよく効くのです。
でもちょっと待って、あなたの身体の特性は?!
だからと言って、それだけではありません。血行不良の「オ血」が強い人は、もっとはっきりオ血をとる方剤(例:桂枝茯苓丸)、冷えが強くて疏滞や生理不順がある人は温める方剤(例:温経湯)、疲れやすくて胃腸が弱い・太りにくい方は気を強める方剤(例:四君子湯)などなど、バリエーションは多彩です。
最後に
どの漢方を飲めばいいのか?
わからないけどできることはやってみたい!
そんな方には以下の3つをよく感じてお選びください。
・飲んでみて美味しいと感じるか?
・お通じや睡眠、食欲など、日常面で変化があるか?
・3ヶ月しっかり飲み続けて身体は変わるか?
これらが一番わかりやすいかと思います。しばらく飲んでみて、1つも当てはまらないようなら、変えた方が良いでしょう。あなた自身の身体の特徴をよくみてくれる漢方医に見てもらい、適切な処方を受けられると良いですね。私たち鍼灸師も東洋医学の知識を持ち合わせておりますので、漢方選びもお手伝いできることがあるかと思います。気になる方はお気軽にお声かけください。
ちなみに…
当帰の語源として、「当」に「帰る」という意味で、病弱な女性がこれを服用すると元気になった、産後の肥立ちが悪い女性が実家から夫のもとへ帰ってくることができた、などのいわれがあります。
鍼灸師 西村 亮二
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