- 妊娠にビタミンDが重要と聞いたのですが、本当ですか?
PCOがあるので摂った方が良いといわれましたが、説明は特にありませんでした。
ですからその関係性が分かりません。教えてください。
①に引き続き「ビタミンDについて」深めていきましょう。
近年、「ビタミンDが生殖、妊娠や出産に大きく関与している」という報告が次々と発表されています。
(なんと「40歳以上の女性ではビタミンD摂取量が多いほどAMHが高い」という報告もあるようです。)
ん・・前回の説明の中にそのような働きがあるという記載はなかった、はず、、ですよね。
そこで掘り下がってみたところ、
ビタミンDの作用には、骨に関する作用のほか、「細胞増殖抑制作用」・「免疫抑制作用などがあり、そこから、「自己免疫疾患、感染症、さらには癌にも有効なのではないか」との見方が高まり、
その概念をベースに「ビタミンDは、AMH遺伝子の発現に作用する」という仮説から、実験がなされ、結果が次々と発表されだしているのです。
(ビタミンDによりAMHの遺伝子発現が増加する、という報告も出ています。)
まだ、試験管レベルの結果ではありますが、これは生殖分野において、素晴らしい発見であることには違いないでしょう。
ほかに、着床に必要な遺伝子である子宮内膜のHOXA10の発現にビタミンDが関与しているということから、体外受精において、卵胞液のビタミンD濃度が1ng/ml高くなると、妊娠率が6%増加する。
ビタミンDレセプター(生体内にあるビタミンDの受け皿)が子宮や卵巣、精巣や胎盤に存在している。
着床に必要な遺伝子として見つかった「HOXA10」(子宮内膜に存在)との関わりを持つ。
ビタミンDは、免疫細胞に働きかけ、習慣流産の方の子宮内膜から産生される異常パターンの細胞産生を抑制する。
ビタミンDは、hCG(作用:プロゲステロンの産生を保つ、母児免疫寛容へ影響)分泌、
E2(エストロゲンの一種。作用:子宮内膜の肥厚、子宮頚管粘液分泌関与)や P(リン)の分泌を調節しているので、胎盤の形成不全から妊娠高血圧症候群を起こす物質との関連が示唆されている。
ビタミンDは、胚と子宮内膜と密接に関係し、着床や胎盤形成の過程で重要な役割を担っている。
ビタミンDの濃度が高いと、精子の質が高い。
ビタミンDの濃度が高いと、子宮筋腫になりにくい。
ビタミンDの濃度が低いと、低出生体重児が生まれやすくなる。
ビタミンDの濃度が低いと、小児ぜんそくにかかるリスクが高くなる。
ビタミンDはほとんど乳汁移行しないため、胎児期から授乳期は不足なく摂取しなければ、呼吸器感染症、湿疹、認知機能障害、自閉症などの健康問題につながることがある。
などと言った作用も確認され、「妊娠に対し良い方向に働きかける」という報告が多数あがっています。
「AMH=妊娠率」ではなく、卵子においては生まれながらにしてその数は決まっていますので、その値が妊娠率を左右することはありません。
AMHは、原始卵胞から発育する前胞状卵胞数を反映しているのであって、つまり、「卵巣の中にどのくらい卵子が残っているかの目安」を示すものです。
さらには、卵子の質までを反映するものでもないので、AMHの値が低いからをと言って、やはり妊娠率を左右するものでもないと言えるのです。
ただ単にAMHにだけ注目するのではなく、
「ビタミンD」という栄養素をもって、妊活中の体内環境がより上質に調えられる、といっても過言ではないのかもしれません。
ビタミンDたっぷりなキクラゲと卵の炒め物。妊活にぴったりなメニューです。
参考文献)
Fertility and Sterility 2010、2012、
The Journal of Clinicul Endocrinology & Metabolism 2012
The Cornell University Report
管理栄養士&鍼灸師 水村
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