妊孕性(にんようせい)の温存

妊活応援ブログ | 不妊鍼灸治療のアキュラ鍼灸院

妊孕性(にんようせい)温存とは、「将来妊娠の可能性が消失しないように、生殖機能を保存すること」です。

ひと昔前は 持病を持っていたり、がんなど大きな病気を経験した人の出産は難しいものでした。
治療のために出産をあきらめるのは仕方がないことと考えられ、治療後の妊娠・出産について相談する場所もありませんでした。

今、治療や生殖医療の進歩により、治療後に妊娠・出産する方が増えています。
病気の治療が最も優先事項ではありますが、今まで焦点を当ててこられることの少なかった「治療後の妊娠・出産」について可能な限り支援する動きが広がってきました。

2014年6月に、日本産科婦人科学会は 悪性腫瘍などに罹患した女性に対し、「その治療で将来の妊孕性が失われると予想される場合、妊孕性を温存する方法として未受精卵子の凍結、卵巣組織の凍結が考えられる」との見解を示しています。

妊孕性(にんようせい)の温存

女性のがんで特に妊娠・出産に影響が出る恐れがあるのは、乳がん、子宮頚がん、子宮体がん、卵巣がん、白血病などの血液のがんです。
なかでも乳がんは45歳未満の女性がかかる悪性疾患の40%を占めています。

がんの治療には大きく 手術、放射線治療、薬物療法の3つがあります。
乳がんでは約80%の方が何らかの薬物療法を受けます。
薬物療法の中でも、抗ガン剤を使用する“化学療法”では、治療によって閉経する危険性は20代で20%、30代で30~40%、40代で80~90%と言われています。
また、薬物療法のひとつであるホルモン療法は治療期間が5~10年と長く、治療終了時に妊娠が難しい年齢になっている場合も少なくありません。

がん治療前に妊孕性を温存する方法として、
・胚(授精卵)の凍結
・未受精卵(卵子)の凍結
・卵巣組織の凍結
・卵巣位置移動
(放射線が当たらない位置への移動。手術が必要で、妊娠には体外受精が前提。)
などがあります

受精卵、未受精卵子の凍結保存については、採取までに最低2~4週間必要なため、治療まで時間がない場合は適用できません。また、ホルモンの影響を受けるがんの場合も採卵の為にホルモン剤を使用できないため適用できません。

気になるその後の妊娠率ですが
未受精卵子を使っての凍結・融解妊娠はまだ臨床データ自体が少ないこともありますが、
*凍結受精卵での妊娠率 20~30%に対し、
*未受精卵子の凍結・融解後の妊娠率 5~10%と、
未受精卵子を使っての妊娠率の方が格段に低くなっています。

理由は、卵子凍結技術の難しさです。
凍結する際には、細胞内の水分が氷の結晶となって細胞を傷つけてしまわないよう、凍結保護材というものを細胞に浸透させますが、細胞が大きく体積が大きいほど難しいのです。
卵子は0.1mmと人体の中で最も大きい細胞ですので、受精卵や精子よりも凍結が難しいのです。
また、全ての卵子が受精するわけではありませんので、どれだけの卵子が受精するかは実際やってみるまで分からないという点もあります。

胚や卵子の凍結に対し、卵巣組織の凍結とは
手術で卵巣、または卵巣組織の一部を取って凍結、出産可能な時期に体内に移植する方法です。
メリットは、がんの治療が迫っていても対応できる事、卵巣内の卵子を多く温存できるという点です。
デメリットは、卵巣組織採取のため がんの治療以外に手術を受けなければならないこと、卵巣組織凍結自体新しい技術の為、まだ研究段階の治療法であるという事です。

この方法で2004年に最初の出産が報告され、現在までに60人以上の赤ちゃんが誕生しています。
ただし、白血病など血液のがんや、卵巣組織にがん転移の可能性がある場合など、組織を体内に戻すことでがん再発のリスクを含む場合は適用できません。
2016年4月の段階で日本では20の施設で卵巣組織凍結が実施されています。

がん治療に限らず、将来 妊娠・出産を希望するすべての患者さんが治療後の妊娠・出産について相談できる環境・情報提供の場が広がっていくことが大切ですね。
私自身も不妊カウンセラーとして勉強を重ね その一助となれればと願っています。

鍼灸師 村上 華子

参考:
特定非営利活動法人 日本がん・生殖医療学会
聖マリアンナ医科大学病院生殖医療センター
日本産科婦人科学会
厚生労働省・小児若年がん長期生存者に対する妊孕生のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究—–

妊活応援ブログ | 不妊鍼灸治療のアキュラ鍼灸院

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

記事がよかったらシェアお願いします!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次