不妊治療での第1ステップはタイミング法です。
タイミング法とは排卵日を予測してタイミングをとる方法ですが、タイミング法でうまくいかない場合は次のステップアップを行います。
第2ステップはAIH(人工授精)です。
AIHとは事前に採取した精子を子宮内に注入して、体内で卵子と精子が出会う確立を高めす。
完全自然周期と排卵誘発剤使用周期があります。
【完全自然排卵】
超音波で卵巣内の卵胞の発育状態を観察しながら排卵前日から当日に行います。
当日は精子を採取(自宅or病院)して検査後に処理液に混ぜて遠心分離器にかけ、運動性の高い精子を濃縮し、雑菌を除去します。
精子の準備ができたころ、内診台にあがり注入を受けます。カテーテルで子宮の奥に注入するだけなので、1分程度で終わります。注入時に痛むことがありますが、麻酔は不要なのでリラックスして受けましょう。処置後は、すぐに帰宅させるところもあれば、内診台の上か待合室などで15分から30分ほど安静にしてから帰宅させるところもあります。感染予防の抗生物質が処方される場合は忘れずに飲んでください。人工授精をしたからといって、その後のセックスを制限することはありません。むしろ、排卵時期の絶好のタイミングでもあるので、自然妊娠の可能性に期待して、頑張ってみるのもよいでしょう。
AIH〈人工授精〉の適応ケース
・タイミング法で妊娠ができない場合
・軽度の乏精子症、精子無力症などの場合
・性交障害や射精障害がある場合
・フーナーテストの結果がよくない場合
・原因不明で女性の年齢が高い場合
【排卵誘発剤を使用】
排卵誘発剤を使用した人工授精は自然周期の人工授精よりも病院へ行く頻度が多くなります。
排卵誘発剤は卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体ホルモン(LH)の分泌を正常に整える作用があります。そして、性腺刺激ホルモンの分泌異常、多嚢胞性卵巣症候群、黄体化非破裂卵胞などの排卵障害がみられる場合に治療としても用いられます。
生理1日目~5日目
今周期、人工受精を行うか、完全自然排卵にするか排卵誘発剤を使用るかを担当の医師と相談。
完全自然周期で行う場合この時期の通院は不要。
生理10日目~12日目
超音波で卵胞の大きさをチェックしたり子宮内膜厚を計測します。また、血液検査でエストロゲン(E2)を測定し正確性を高める方法もあります。
生理12日目から14日目
排卵日前日から当日、採取した精液を遠心分離器にかけて洗浄・濃縮を行い(所要時間は約1時間)、子宮の奥にカテーテルを使って注入します。
生理14日目以降
人工受精後は、排卵と黄体機能の確認を行います。黄体機能の低下が認められる場合は黄体機能補充を行い、着床率を高めます。
生理28日目以降(生理予定日開始以降)
血液検査でhCGを測定、妊娠判定を行います。
※クリニックによって、排卵誘発剤の種類や投与のタイミング、検査は変わります。
排卵誘発剤の経口薬と注射
経口薬タイプ
飲み薬は効目がゆるやかで、通院が必要ありませんが、副作用として頭痛・目のカスミ・吐き気などがあります。
クロミフェン製剤(クロミッド・セロフェン)
クロミッドは、脳下垂体に作用してFSHやLHの分泌を促す作用があります。月経5日目から5日間内服します。クロミッドを服用しても卵胞が成熟せず排卵がみられない場合には、もう一度クロミッドを服用する2段投与や注射タイプの排卵誘発剤をプラスする場合もあります。
注意:クロミフェンを長期服用すると、頸管粘液が減ったり、子宮内膜が薄くなったりすることがあります。
シクロフェニル製剤(セキソビット)
卵巣の中で卵子を包んでいる卵胞の発育を助ける作用があり、排卵はできているが妊娠しにくい人に対して最初の段階で処方される薬です。
セキゾビットは効果自体緩やかで、副作用が少ない内服薬です。
一般的に月経5日目から5日間内服して、経過を観察します。
注射タイプ
飲み薬が脳に働きかけてゆるやかに排卵を促すのに対し、注射剤は直接、卵巣に働きかけて排卵をおこさせます。
hMG製剤(ゴナピュール・ヒュメゴン・HMGフジ)
FSHとLHが配合されたホルモン注射で、卵胞を成長させる働きがあります。月経開始から数回注射します。hMG注射単体で使用されることもありますが、クロミッドの効果をより高める目的で、補助的に使われることもある。
※LHを含まないFSH製剤(フォリルモンP・フェルティノームP)もあります。
注意:卵巣が過度に刺激されて複数の卵胞が育つなどの理由から、卵巣がはれたり、腹水がたまったりするOHSS(卵巣過剰刺激症候群)に気をつけなけらばいけません。また、多胎妊娠のリスクもあります。
その他の排卵誘発療法
・hCG注射:排卵を促す作用のある注射です。クリミッドやhCGで卵胞を成長させたのちんい、黄体ホルモンに似た働きをもつhCGを注射することで排卵させます。
・乳がんの治療薬であるアロマターゼ阻害剤には、エストロゲンの分泌を抑制する作用があります。それを利用して、エストロゲンが少ないようにからだに認識させて分泌を促し、結果、排卵しやすくさせます。排卵誘発剤として応用されるケースでは、おもに「フェマーラ」が処方されます。排卵誘発剤と比べて、子宮内膜を薄くすることもなく、OHSSの発症も低い半面、効き目は弱いのが難点。
・妊娠中や産後に分泌されるプロラクチン(乳汁分泌ホルモン)の分泌異常である高プロラクチン血症は、排卵障害の一つである。血中にプロラクチンが多くなると排卵が起こりにくなるため、ドーパミン作動薬による治療が必要。下垂体でのプロラクチン分泌を抑制する薬で服用後2ヶ月くらいで排卵の回復がみられる。
・カウフマン療法:卵巣が分泌するエストロゲンとプロゲステロンを薬で補い、卵巣を休ませて機能を回復させようとする療法。排卵をおこさせる効果はありませんが、卵巣に代わってホルモン剤を数ヶ月服用した後に中断すると、卵巣が刺激されて、自然に排卵がおこることがある。
◆家族や妊娠に対する倫理観や、子供の「出自を知る権利」などの問題はありますが、無精子症などの夫に原因があって妊娠が不可能な場合、AID(非配偶者間人工授精)という選択肢も残されています。
◆卵子の未成熟卵が成熟卵に育つまで約半年かかります。鍼の効果を出すためには、AIHを行う半年前から、最初は1週に1回と2週に2回のペースを交互に来院していただき、体調が整ってきたら週に1回のペースに変更していただきます。当院の独自の鍼灸メソッドを行うことで子宮・卵巣・脳の血流を改善することにより、卵子の質を高め子宮内膜を厚くして、ホルモンバランスを整えます。
男性不妊の場合、精子は約70日間かけて精子へと成長していきます。人工授精や体外受精の10週間前から鍼灸で体を整えておくと治療効果が高まります。
参考文献:はじめての妊活スタートブック 赤ちゃんがほしいときに読む本
監修 日本赤十字社医療センター産婦人科 宮内彰人・笠井靖世
鍼灸師 安田 直子
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