みなさんこんにちは。
今日は受精に至るまでの精子の旅についてお話しします。
おとぎ話のお姫様は王子様を深い森の中で待ち続けます。日本のむかし話、かぐや姫も様々な艱難辛苦を貴公子達に与え、その中からたったひとりを選び抜こうとしますね。精子の旅は彼らに匹敵するほど、いやある意味それ以上に過酷かつ苦難の連続です。
さて、旅は射精によって体外に精子が放出されるところから始まります。
わずか2秒で膣内に射出された精子たち。その数なんと日本の人口を超える1億~2億5000万。
全長はおよそ50μm(0.05mm)です。
彼らの目的はただ一つ…..卵子と受精すること!
しかしそこは精子にとって過酷な環境です。なぜなら女性の膣内は酸性。ものの30分で仲間の99%が生き絶えます。
その中で生き延びるためにアルカリ性の頸管粘液は絶対不可欠です。
しかし、頚管粘液も皆を通してくれるわけではありません。排卵直前の頚管粘液は透明で水っぽく卵白のように見え、よく伸びていかにも精子が入りやすそうな形状ですが、実は複雑な洋歯状構造をしており、異常な精子は通り抜けることができません。頚管粘液には精子の侵入を助ける働きの他に、だめな精子をシャットアウトする働きもあるのです!
何とか子宮頸部に到着した精子、その数既に3000個。この時点で、最初の0.0012%にまで激減しています。
そして彼らには更なる試練が。それは広大な子宮の中から、卵管へとつながる小さな入り口を見つけ出すことです。
加えて彼らの行く手を遮る最強の敵……それはおびただしい数の白血球です。ご存知のように白血球は外部から進入した細菌やウイルスなどの異物を排除する役割があり、精子たちを悪者だと認識し排除しようと攻撃してきます。なんということでしょう!反撃するすべのない精子はただ逃げ惑うのみ。そんな中、白血球の攻撃をかいくぐったわずかな精子たちが幸運にも卵管の入り口を発見します。
ところが卵管も識別システムが働いており、優秀な精子しか通過できません。白血球から逃れかつそれをクリアした精子だけが、卵管へと到達することができます。
さて、ここでまた一つ問題です。卵管は左右二本あるのに、精子は間違った方向に進んでしまうことはないのでしょうか?
答えは、問題ありません!
最近の研究で精子には香りを感知する受容体があって、匂いで正しい卵管を選んでいることがわかっています。その香りに導かれて精子は行き先を選ぶのです。
卵管に辿り着いた精子達。その数はすでに数100個。
排卵された卵子は卵管の一番奥、卵管膨大部に現れます。精子は子宮の入口から受精のステージである卵管膨大部まで17~20cmの距離を早いもので5分、遅くとも40分ぐらいで到達すると言われます。
卵管には精子が必要とする栄養素があり、数日程度なら生きていられます。この休息も精子にとっては必要な時間です。精巣の中や射精直後の精子には受精能力はありません。精子が膣内に射精されてから、頸管、子宮、卵管等の女性の生殖器官に一定期間とどまるうちに、受精可能な状態になります。受精能の会得、あるいはキャパシテーションと言われ人間の精子の場合だいたい、5~6時間必要です。※
さあ、いよいよ夢にまで見た卵子が近づいてきました。
不規則で激しくうねるハイパーアクチベーションという動きで、精子たちは一斉に卵子に向かいます!
卵子のまわりには透明帯という分厚くて固い膜があり、この膜を突破するのには精子の先端にあるヒアルロニデースという特別な酵素の働きが必要です。でも一匹の精子が持っている酵素の量ではどうしても透明帯を突き破ることはできません。何匹もの精子が透明帯にアタック。
ついに、幸運な一匹の精子が透明帯を通って卵の中に入り込みます!
ここまで力強く精子を運んできた尾部は切り離され外に取り残されます。同時に透明帯の質は変わり、他の精子が中に入って来られなくなりました。
卵子の内部では精子の頭部が割れ遺伝子情報が飛び出し、卵子の遺伝子情報とまざりあい…..核分裂が始まり受精が完了します。
新しい生命の誕生です。
いかがでしたか。
書いていて精子のあまりに過酷な旅に驚きました。私たちはもれなくこのように選び抜かれて生を受けていることに感動しますね!
また、今回精子は数と同時に質(運動率)も重要ということも再認識しました。
当院でも日々の治療とサプリメントで精子の所見改善のお手伝いをしております。
どうぞよろしくお願い致します。
※排卵前にタイミングを取るのはこのためだったのです。
当院院長のタイミングの取り方指導の記事もございますので参考になさってください。
妊娠しやすい時期と正しいタイミング法について [不妊症] All About
鍼灸師 村越 麻紀子
執筆者紹介
アキュラ鍼灸院鍼灸師 村越 麻紀子
千葉県生まれ。私は小さい頃から母の肩をたたくのが好きでした。大学卒業後、教授秘書として就職するも、母の「楽になったよ。ありがとう。」と喜んでくれた笑顔が忘れられず、「人の体をこの手で癒す仕事がしたい!」と言う一心で鍼灸師になりました。沢山の患者様の笑顔に触れ、そして自分の家族が出来た今もこうして大好きな仕事が続けられてとても幸せです。 この先も患者様の為に日々研鑽を積みたいと思っています。
趣味は海外の方との交流を通じて世界の文化に触れる事。都市建築や美術館巡りも好きです。古く伝統あるものに心魅かれます。
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