論文解説:
鍼治療はエオタキシン/CCR3系の抑制を介して酸球-マスト細胞の活性化を弱め、モデルラットの月経痛を軽減させる
Acupuncture Alleviates Menstrual Pain in Rat Model via Suppressing Eotaxin/CCR3 Axis to Weak EOS-MC Activation
はじめに
近年の研究により、ケモカインを介した炎症が痛みの発生と維持に関わっていることが明らかになった。別の研究では、月経困難症を発症すると、ケモカインの一種であるエオタキシンの濃度が上昇することが示唆されている。本研究の目的は、好酸球の制御に重要な経路であるエオタキシン/C-Cケモカイン受容体3 (CCR3)系が、月経困難症に対する鍼治療の鎮痛効果に関与しているかどうかを調査することである。
方法
寒凝月経困難症(CCD)モデルラットを準備し、三陰交(SP6)に直刺もしくは横刺を20分間行った。一部のラットには、鍼治療の30分前にCCR3アゴニストであるCCL11を投与した。疼痛の強さはライジング反応に基づいて評価した。子宮収縮の強さや頻度は電気生理学的手法により検出し、評価した。エオタキシン、ヒスタミン、IL-6の濃度はELISAで評価した。CCR3とH1受容体の発現はRT-qPCRとウェスタンブロットで解析した。好酸球、マスト細胞、好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)、好酸球カチオン性タンパク質(ECP)の発現は、HE染色、トルイジンブルー染色、免疫染色を用いて評価した。
結果
鍼治療はCCDラットの月経痛を顕著に軽減し、特に横刺で顕著であった。子宮収縮はCCDラットで増強していたが、鍼治療によって改善した。また、横刺はエオタキシン、ヒスタミン、IL-6の放出を減少させ、CCR3やH1受容体の発現を抑制した。子宮組織における好酸球、マスト細胞、EPO、ECPの発現はCCDラットで増加したが、横刺によって改善した。上記の通りCCDによる月経痛、ヒスタミン濃度、ECPの発現増加は横刺によって改善するが、この効果はCCL11の投与によって無効化された。
結論
三陰交への横刺は、エオタキシン/CCR3系の抑制を介して好酸球やマスト細胞の活性化を弱めることで、CCDラットの子宮の炎症を改善し、月経痛を緩和した。本研究の結果は、鍼治療が月経困難症に対する有望なアプローチであることを示すと同時に、刺鍼技術の重要性を明らかにした。
解説
いままで、鍼を刺す角度を比較した論文はほとんどなく、この論文では、横に鍼を刺す方法がもっとも効果的であるという結論です。古典的な鍼灸治療を行う場合、鍼の角度や微妙な操作は治療効果へ影響すると言われています。例えば、鍼を経絡と言う気の流れに沿って刺す場合とその流れに逆らって刺す方法があります。流れに沿って刺す方法を補法、流れに逆らって刺す方法を瀉法と表現します。このような考え方を迎隋の補瀉と呼びます。
かなり専門的な話になってしまいましたが、この論文で直角に刺す方法と横向きに刺す方法を比較しています。横刺はラットの腹部に向けてと記載されていたので、経絡に沿ってさしているので、補法になります。ということは、補法が無造作に直角に刺した鍼より効き目があるということになります。
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