【論文解説】miRNA-seq分析が明かす胚移植を受ける患者の分子レベル子宮内膜着床能への鍼灸効果

論文解説:
miRNA-seq分析が明かす胚移植を受ける患者の分子レベル子宮内膜着床能への鍼灸効果

Mu,Y. et al.(2020) Integrated miRNA-seq analysis reveals the molecular mechanism underlying the effect of acupuncture on endometrial receptivity in patients undergoing fertilization: embryo transplantation. 3 Biotech 10, 6 (2020).

従来、鍼灸の着床能に関する研究は主にカラードップラー超音波による内膜パターン計測や内膜の厚さなど、形態測定が主流でした。2019年Zhong et al によって発表された鍼灸の着床能向上に関するシステマチックレビュー、メタ解析において鍼灸は内膜を厚くさせ、内膜3層パターンを増加、妊娠率を向上させるとしている。1)

ここでは、実際に分子レベルで鍼灸が着床に及ぼす影響について研究した論文を紹介したい。

この論文2)3)はmicroRNA sequencing解析を用い、鍼灸を受けた不妊女性群と受けていないコントロール群の内膜サンプルよりncRNA, mRNA,microRNA(DEmiRNAs)の発現量の比較、ターゲット遺伝子の予測を行い、また、鍼灸の分子メカニズム解明のため、ceRNA(competing endogenours RNA) ネットワークを構築し、発現が異なる遺伝子を特定した。

この研究対象は12名。不妊期間1.5-9年。鍼灸実施期間はIVF-ET 実施2周期前でCD1またはCD2より一日おきにの鍼灸治療。使用穴:次髎及び子宮へ低周波治療 2-15hz。その他、関元、足三里を使用。今回の研究対象者の特性を下記、表にまとめた。

結果

  1. ATP異化プロセスに関連する遺伝子発現の上昇がATP消費を促進し、血流増加を促したことが示唆された。
  2. cAMPを抑制する遺伝子ADCY2の上昇により血小板の産生増加が示唆された。
  3. エストロゲン代謝経路に関連するカルモジュリン様蛋白3(CALML3)及びミオシン10(myosin10)の発現が増加。様々な論文よりこれらのたんぱく質は細胞運動や細胞間接着に影響を与えることが示唆されている。
  4. YAP(yes-associated protein)の活性化が示唆された。

補足:YAPとはHippo経路の一部で子宮内膜の脱落膜化、絨毛細胞の浸潤の制御、さらには胎盤形成に重要な役割を果たしている。


解説:
今回の研究で特定したそれぞれのRNAが鍼灸施行群とコントロール群の間でアップレギュレーションされるもの、ダウレギュレーションさるものが明らかになり、分子レベルで鍼灸の効果を検証することができた。
いまだ鍼灸の作用について未解明な部分が多いが、このような研究が増え、鍼灸の効果解明がさらに進むことを願う。


文献

  1. Zhong et at, (2019) Acupuncture in improving endometrial
    receptivity: a systematic review and meta analysis, BMC Complementary and Alternative Medicine (2019) 19:61
  2. Jie Cheng et al,(2019) Whole Transcriptome Sequencing Reveals How Acupuncture
    and Moxibustion Increase Pregnancy Rate in Patients Undergoing In Vitro Fertilization-Embryo Transplantation, BioMed Research International
    Volume 2019, Article ID 4179617, 8 pages
  3. Mu,Y. et al.(2020) Integrated miRNA-seq analysis reveals the molecular mechanism underlying the effect of acupuncture on endometrial receptivity in patients undergoing fertilization: embryo transplantation. 3 Biotech 10, 6 (2020).

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