【論文解説】電気鍼治療は調節卵巣刺激ラットの子宮内膜着床能を改善する(原著論文)

論文解説 | 不妊鍼灸治療のアキュラ鍼灸院
【論文解説】電気鍼治療は調節卵巣刺激ラットの子宮内膜着床能を改善する(原著論文)

論文解説:
電気鍼治療は調節卵巣刺激ラットの子宮内膜着床能を改善する(原著論文)

High-frequency electroacupuncture improves endometrial receptivity via regulating cell adhesion molecules and leukemia inhibitory factor / signal transducer and activator of transcription signaling pathway
You F et al. Bioengineered. 2021;12(2):10470-10479.

概要:
調節卵巣刺激(COH)は子宮内膜着床能を低下させる。本研究ではCOHラットに電気鍼治療を行い、着床能にどのような影響が表れるか検証した。COHラットは健常ラットと比較して子宮内膜厚、ピノポード数、胚盤胞着床数が優位に減少していたが、電気鍼治療群ではこれらの所見が改善し、特に高周波電気鍼を行った群で顕著であった。また、電気鍼治療群では子宮内膜における細胞接着分子の発現が低下し、LIF/STAT3シグナル伝達経路が活性化していた。電気鍼治療は、左記の機序によりCOHラットの子宮内膜着床能を改善する可能性がある。

背景:
不妊治療ではしばしば調節卵巣刺激(COH)が用いられる。しかし、COHは着床ウィンドウにおける子宮内膜着床能を低下させて妊娠率の低下と流産率の上昇をもたらす点が課題である。
子宮内膜着床能を評価する項目として、子宮内膜厚の適正さ、ピノポードの多さ、着床する胚の多さが挙げられる。また、細胞接着分子であるE-カドヘリン、β-カテニン、クローディン1は子宮内膜上皮の離開に関与しており、これらの発現が低下すると着床能が向上する。このほか、卵胞や胚の発育、胚の着床、妊娠の維持を促す分子機構として、LIF/STAT3シグナル伝達経路が知られている。
鍼治療は不妊治療に長年用いられ、実際に着床能や妊娠率を改善することが示されている。電気鍼治療は鍼治療の発展・改良版として広く利用されており、着床能にプラスの効果を持つ可能性が高い。この研究では、電気鍼治療によるCOHラットの子宮内膜の変化、ならびに細胞接着分子やLIF/STAT3シグナル伝達経路への影響を調査した。

方法:
雌ラットを健常群、モデル治療群、低周波電気鍼治療群(LF-EA群)、高周波電気鍼治療群(HF-EA群)に無作為に分け、各群はそれぞれ20匹とした。
モデル治療群、LF-EA群、HF-EA群には妊娠雌馬血清ゴナドトロピン(PMSG)およびヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)を腹腔内注射し、COHモデルラットを作製した。未治療群のラットには等量の生理食塩水を腹腔内注射した。
経穴は、実験動物の鍼灸アトラスにおけるCV4(関元)とST36(足三里)を選択した。0.30×13mmのステンレス製針を用い、鍼の深さは3~5mmとした。治療は7日間を1コースとし、コース間は1日休んで計4コース(31日間)行った。LF-EA群では分散波と高密度波を2Hzで切り替え、1mAで電気刺激を20分間加えた。HF-EA群では切り替えを50Hzで行い、そのほかは同条件とした。健常群とモデル群はラットの固定のみを行った。

結果:

  • 子宮内膜の厚さ
    モデル治療群の子宮内膜は健常群よりも有意に薄かった。LF-EA群とHF-EA群の子宮内膜はモデル治療群よりも有意に厚かった(P < .01)。
  • 胚盤胞の着床能
    モデル治療群のピノポードは健常群よりも有意に少なかった。LF-EA群とHF-EA群のピノポードはモデル治療群より多かった。
    モデル治療群では子宮内の着床数が健常群より顕著に少なかった。LF-EA群とHF-EA群の着床数はモデル治療群より優位に多かった(P < .05)。
  • 子宮内膜の細胞接着因子
    モデル治療群ではE-カドヘリン、β-カテニン、クローディン1の発現が健常群と比較して有意に亢進していた。LF-EA群、HF-EA群ではモデル治療群と比較してこれらの発現が有意に低下していた(P < .01)。
  • 子宮内膜のLIF/STAT3
    モデル治療群ではLIF/STAT3の発現が健常療群と比較して有意に低下していた。LF-EA群、HF-EA群ではモデル治療群に比べてLIF/STAT3の発現が有意に亢進していた(P < .001)。
  • LF-EA群とHF-EA群の比較
    電気鍼治療群とモデル群との差異は、LF-EA群よりもHF-EA群でより大きくなる傾向にあった。ただし、論文中で統計学的な有意差は示されていない。

結論:
電気鍼治療は細胞接着分子の減少およびLIF/STAT3シグナル伝達経路の亢進を誘発し、COHラットの子宮内膜着床能を向上させる可能性が示唆された。また、その効果は低周波よりも高周波の電気鍼治療で優れていた。電気鍼治療が子宮内膜着床能の他の要因に及ぼす影響については、さらに調査が必要である。

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