【論文解説】体外受精を除外した鍼治療の不妊患者への効果

論文要約・学会発表

論文解説:
体外受精を除外した鍼治療の不妊患者への効果(システマチックレビュー、メタ分析)

Acupuncture for infertile women without undergoing assisted reproductive techniques (ART): A systematic review and meta-analysis
Yun, Liu et al, Medicine: July 2019 – Volume 98 – Issue 29

鍼治療の体外受精時の効果に関する論文は数多く発表されている。初期のものはPaulus1)らによって2002年に発表された論文で鍼治療群妊娠率42.5%(34/80)に対し、鍼治療を行っていない群は26.3%(21/80)。鍼をすることによって妊娠率が16.2%上昇するといったものでした。鍼を実施する時期としては、主に移植前後に鍼治療を一定のプロトコールで行うというものです。Paulusらの発表後、移植前後の鍼の効果に関する論文は多数発表され、2018年のシステマチックレビュー2)、およびメタ解析において、鍼の有効性が報告された。

論文の概要は下記の通りである。

主要アウトカム評価項目 臨床妊娠率
論文数 20、組入参加人数 女性5,130 名
鍼灸を補助的治療を受けていない群と比較するとメタアナリシスでは妊娠率の増加 (リスク比[RR] 1.32, 95% 信用区間[CI] 1.07–1.62, 12 論文, 女性2,230名 )、
生産率の増加 (リスク比RR 1.30, 95% 信用区間CI 1.00–1.68, 9 論文, 女性1,980 名) 、流産の低下 (RR 1.43, 95% CI 1.03–1.98, 10 論分, 女性2,042 名) を認めた。
特に、低妊娠率や反復不成功例の女性の鍼灸利用では著しい効果が示唆された。
偽鍼群と比較した際、有効性を示すことはできないが、補助的治療を受けていない患者群と比較した場合、鍼灸群では妊娠率の改善が示唆されると結論づけている

さて、今回紹介するのは、体外受精による妊娠を除外した鍼の効果についての研究である。

主要なアウトカム評価項目 臨床妊娠率
論文数 22、組入参加人数 女性 2,591 名
鍼群は受けていない群と比較すると有意に妊娠率が上昇した(RR = 1.84, 95% CI 1.62 to 2.10, P < .00001) 西洋治療介入のみの群と鍼+西洋治療介入、鍼+漢方、西洋治療+鍼+漢方で比較すると、西洋治療のみの介入と比較すると、鍼が介入した群の妊娠率は優位に高かった。 特に、PCOや排卵障害がある患者のサブグループの妊娠率は鍼無し群と比較すると、妊娠率は顕著に高かった。LHの減少が観察された。FSHに関しては変化は見られなかった。

コメント:
様々な研究から鍼灸の不妊に対する有効性が明らかになっております。特に近年では次世代シークケンシングシステムの急速な発展により、鍼灸の効果を細胞分子レベルで解明できるようになってきました。鍼灸の不妊に対する効果を簡単に説明しようとするならば、それは自律神経への作用です。血流促進や免疫寛容など、妊娠には欠かせない機序を調整する効果があるからです。

以上

引用文献:
1)”Influence of acupuncture on the pregnancy rate in patients who undergo assisted reproduction therapy”, Paulus et al, Fertil Steril 2002 Apr;77(4):721-4
2)”Acupuncture performed around the time of embryo transfer: a systematic review and meta-analysis” Caroline A. Smith et al, Reproductive Biomedicine, March 2019Volume 38, Issue 3, Pages 364–379

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