本論文は過去5年間に凍結胚移植を行った40歳以上の不妊患者417例、677移植周期を対象とし、胚移植あたり・症例あたりの臨床妊娠率・継続妊娠率を年齢別に検討した論文です。
『40歳以上の凍結胚移植後妊娠率と妊娠に必要な採卵回数』
日本受精着床学会誌 34(1): 89-91, 2017
要約:症例あたりの臨床妊娠率は40歳から44歳まで、毎年4-12%前後低下していくが、45歳以上では臨床妊娠率も継続妊娠率ともに3.4%と著名な低下を認めた。
移植周期あたりの臨床妊娠率と継続妊娠率は胚年齢がたかくなるにすれ臨床妊娠率と継続妊娠率が低下した。40歳ではそれぞれ33.5%(59/176)と23.9%(42/176)だったが45歳以上では2.8%(1/36)と2.8%(1/36)だった。
症例あたりの臨床妊娠率と継続妊娠率は、それぞれ40歳で51.9%(56/108)と39.9%(42/108)だった。45歳以上で3.4%(1/29)と3.4%(1/29)だった。
採卵回数別累積妊娠率の検討では、累積妊娠率90%以上になるのが40歳で5回、41歳で6回、42歳で10回、43歳で10回、44歳以上では33回だった。採卵回数11回以上で妊娠した症例は5例のみで96%以上が採卵回数10回以内の妊娠であった。
解説:ART妊娠率は35歳を超えると年齢が上昇するにしたがって妊娠率が低下します。40歳代にはいっても、年齢が高くなるに伴い、移植あたり、および症例あたりの妊娠率は年々低下していきます。累積妊娠率が90%以上となる採卵回数は40歳では5回、43歳では10回、44歳以上となると33回にも及びます。
高齢になるほど妊娠に必要が採卵回数は増加する傾向になり、妊娠にいたるまでに必要な移植回数も多くなります。
この論文はどこまで不妊治療を続けるかについての一つのヒントになるのではないかと思います。採卵10回に達したが妊娠できなかった症例については、以後採卵を継続しても移植後妊娠できる確率は極めて低率です。
ちなみに、AIH(人工授精)の妊娠率は4回目で約80%、6回目で92%と言われてます。よって、6回がAIHで妊娠できる限界かもしれません。
このように、なかなか妊娠・継続妊娠できない場合は、治療をどこまで継続するのかと一つの目安になるのではないかと思います。
ただし、本論文はあくまで同一クリニックにて継続して治療を受けている人のデータに過ぎません。転院し刺激法・培養法を工夫したり、私たちの鍼灸にて体質改善を行った方のデータは含まれてませんので、このテータの解釈には注意が必要です。
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