2019年に販売された高齢診療ハンドブック(専門家向け書籍)掲載された当院のデータです。
データは年齢を軸に2つの群(35歳~39歳)と(40歳~44歳)に分け、妊娠に至るまでの鍼灸治療回数、採卵回数、移植回数、移植のみに鍼灸を利用された方と、採卵前から鍼灸を受けた方の臨床妊娠率を示しています。当院で妊娠された110名を対象に研究しました。
この研究で興味深い点は2つありましたので、共有します。
1)40歳~44歳の群では、採卵前から鍼灸を受けている群の方が、妊娠反応が出た際、心拍確認まで到達する率が20%向上すること。
35歳~39歳の群では優位な差はありませんでした。
2)40歳~44歳の群では、治療回数が10回以上の方がの心拍確認率が約18%上昇します。
35歳~39歳では、有意な差がありませんでした。
考察:
40歳を超えると、染色体の数の異常が増えることが様々な研究で分かっていますが、一定期間継続して鍼灸を受けること、そして、採卵前から鍼灸を受けることで、心拍確認後の流産率が低下すること分かりました。このデータから、40歳を超える方は採卵の約3カ月前から採卵に向けて鍼灸を受けることで、一定数の流産率は低下することが示唆されました。
鍼灸治療の回数別データ
(35歳〜39歳 52名)
項目 | カテゴリー | 〜9回 (19名) | 〜10回 (33名) |
---|---|---|---|
年齢 | 37.2±1.5 | 37.4±1.3 | |
回数 | 治療4.8±2.5 | 24.2±18.2 | |
移植 回数 | 採卵・採卵回数 移植回数 | 1.8±2.8 0.8±1.6 | 1.4±2.7 0.9±1.6 |
反応 n(%) | 妊娠非心拍確認 心拍確認 | 5 (26.4) 14 (73.6) | 10 (30.3) 23 (69.7) |
鍼灸治療の回数別データ
(40歳〜44歳 58名)
項目 | カテゴリー | 〜9回 (21名) | 〜10回 (37名) |
---|---|---|---|
年齢 | 41.7±1.3 | 41.9±1.3 | |
治療 回数 | 4.2±2.6 | 30.0±20.0 | |
採卵・ 移植 回数 | 採卵回数 移植回数 | 3.0±2.7 2.0±1.6 | 2.6±2.7 0.9±1.6 |
妊娠 反応 n(%) | 非心拍確認 心拍確認 | 10 (47.7) 11 (52.3) | 11 (29.8) 26 (70.2) |
鍼灸治療の開始時期別データ
(35歳〜39歳 52名)
項目 | カテゴリー | 移植前から (20名) | 採卵前から (32名) |
---|---|---|---|
年齢 | 37.2±1.6 | 37.4±1.3 | |
治療回数 | 4.8±2.5 | 24.6±18.3 | |
採卵・ 移植 回数 | 採卵回数 移植回数 | 1.7±2.8 0.8±1.6 | 1.5±2.7 1.0±1.6 |
妊娠 反応 n(%) | 非心拍確認 心拍確認 | 5 (25) 15 (75) | 10 (31.3) 22 (68.7) |
鍼灸治療の開始時期別データ
(40歳〜44歳 58名)
項目 | カテゴリー | 移植前から (20名) | 採卵前から (32名) |
---|---|---|---|
年齢 | 41.6±1.3 | 42.0±1.2 | |
治療回数 | 3.6±2.3 | 28.3±20.1 | |
移植 回数 | 採卵・採卵回数 移植回数 | 2.6±2.7 1.6±1.6 | 2.9±2.7 1.3±1.6 |
妊娠 反応 n(%) | 非心拍確認 心拍確認 | 9 (50) 9 (50) | 12 (30) 28 (70) |
鍼灸の効果を測定するのはきわめて難しいことです。たまたま妊娠してしまったのか、それとも鍼灸で効果が上がったから妊娠したのか、このようにデータを集積して、初めてみえてくることがたくさんあります。これからもデータの蓄積を行い、より良い治療を提供できるよう日々研鑚を積んでおります。