東洋医学 – 韓国食文化にふれる旅

東洋医学

先日、友人と韓国に行ってきました。
大学時代からの友人ですが、彼女も鍼灸師。ショッピングやコスメにも興味はありますが、今回は、東洋医学、韓国の食文化にふれる旅が私たちのテーマでした。

地下鉄をフル活用してソウル中を歩きまわり、目的の一つ、薬令市場へ。最寄駅のホームに電車が到着すると、気のせいか漢方薬のにおいがどこからともなくするような気がします。市場の門をくぐると、道々に漢方薬の山、山、山!

さすが韓国最大の漢方市場。高麗人参や鹿の角など様々な薬剤卸売店のほか、韓医院や韓方薬局など約500店にのぼる韓方関連店がひしめき合っています。そこで知り合った、若い女性によると、韓国では鍼灸治療は身近なもので、風邪をひいたときなども伝統医療と西洋医学の医者にかかる人が半々ぐらいで、最近では美容鍼灸を受ける方もたくさんいらっしゃると教えてくれました。

時間の都合で治療は受けられなかったものの、鍼灸道具店を探して韓国で広く知られている独特の鍼療法「高麗手指鍼」用の鍼とディスポーザブル鍼(滅菌済の鍼)、お灸を購入することができました。高麗手指鍼は、手を全身の縮図と見立て、その器官や臓器にあたる手のポイントを刺激することによって、弱っている部分の機能の回復を助けたりするという療法です。ボールペン型の専用の管に短い鍼をセットし、手の反応点にストンと鍼を落として刺すという方式。日本式、中国式でも手に鍼を指すことはありますが、専用の道具は初めて見るものでした。

お灸は、アキュラでも使っている筒灸タイプですが、筒が陶器でできているのと、専用のもぐさが、タブレットのように成型してあるのが特徴的です。家で試してみたところ、煙はすごいですが持続時間が約20分と長く、体の芯まで温まりました。

東洋医学 - 韓国食文化にふれる旅
東洋医学 - 韓国食文化にふれる旅

翌日はごみごみとした都会から離れて、自然のある田舎で地元のものを食べたいということで、ソウルの中心地から電車を乗り継いで約1時間、さらにタクシーを山の方に走らせ、『サンサラン』という農園レストランへ。到着すると、平日だというのに広い駐車場は満車。地元の方だけでなく、遠方からわざわざ来たのだろうなという感じの人で大変なにぎわい。広い庭には様々な木々や花が植えてあり、案内されるまで飽きることなく散歩が楽しめます。

散策を楽しんでいると、遠くで店員さんが私たちを呼んでいるのでお店の中へ。待ちに待った食事は、一人ずつに石釜で炊かれたばかりのご飯と、おかずが全31種類の山ナムル定食。机に乗り切らなくて重ねられたお皿の数に圧倒されました。山菜や野菜は自家栽培で採れたもので、味付けの味噌や醤油も先ほど庭にずらりと並んでいた甕で熟成させた手作り。どれも体が休まる素朴で優しい味付けですが、これだけ種類があるのに味が皆違います。

茄子のナムルを口に入れると、味噌の味が実家のおばあちゃんが作っていたのとそっくりで、忘れていた色々な思いが蘇ってきました。家族のために、その時期にとれる野菜を使って毎日手をかけて料理を作ってくれていた事、旧暦の節目には特別な料理を1日かけて用意して、家族みんなでお祝いして食べた事など、私がこうして今元気でいられるのは、その愛情いっぱいの料理をいつも食べさせてもらっていたからだという事に、あらためて感謝の気持ちでいっぱいになりました。

突然ですが、皆さんは「身土不二(しんどふじ)」という言葉を知っていますか?
近年、韓国では「身土不二」をスローガンにして、「国産農産物を愛用し、国産品を優先的に購入しよう」という活動を進めているそうです。「身土不二」は、もともと日本で生まれた言葉で、人間の身体と住んでいる風土や環境とは深く関係していて、その土地の自然に適応した旬の作物を育て、食べることで、健康で長生きすることができるという考え方です。

日本でもかつて、それぞれの地域の気候や風土に合った作物が育てられ、食べられていましたが(地産地消)、生活様式の変化に伴い、消費者の「いつでもどこでもおいしいものを食べたい」という要望が強くなり、農作物の生産形態の変化や、保存方法や運輸手法の多様化などが相まって、地域の特性や季節感と作物との関係性が薄れてしまっています。しかし、植物も人間も自然環境の中で生命を育んでいる限り、気候や風土とは切っても切り離せない関係にあるはず。 大きな自然の流れに自分を合わせてこそ健やかに生活できるものの、流れに逆らえば、やはりどこかに無理や歪みが生じ不調や病を生んでしまうのではないかと、春の木々や花に囲まれ、旬のものを食したことをきっかけに、身をもって感じました。

海外に出かけると、いつも自然と日本のことや自分の普段の生活などを見直すきっかけになります。今回の旅も、良いリフレッシュになり、また生活のヒントをたくさんもらって日本に帰りました。皆様も五感をつうじて、一人一人違う自分のルーツや体が喜ぶものに気づき、毎日健やかに過ごされることを願っております。

鍼灸師 中嶋 恵子

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