当院の患者様からよくいただく質問のひとつに「運動は妊娠に良いのですか?やりすぎは逆効果ですか?」というものがあります。実際に、ジムやランニングを日課にしている方もいれば、ほとんど運動をしていない方もいます。
研究結果から分かるのは、適度な運動は妊娠にプラスになる一方、強度が高すぎたり過度な運動は、特に痩せ型の女性においては妊娠の妨げになることがあるということです。
目次
運動が妊娠に影響する理由
- 血流を良くする
- ストレスを軽減する
- 血糖バランスを整える
- 適正体重を維持する
これらはすべてホルモンバランスや排卵機能の維持に役立ちます。ただし、極端な運動やエネルギー不足は、身体が「妊娠は不適切」と判断し、排卵を抑えることもあります。
医学研究から分かっていること
1. 適度な運動は妊娠率を高める
- 米国の大規模コホート研究では、速歩きや軽いサイクリングなどの中等度運動が、1周期あたりの妊娠の確率(受胎能)を高めると報告されています
👉 Wise LA, et al. Am J Epidemiol. 2012 - 別のレビューでは、週2時間の中等度運動で妊娠の可能性が約15%高まることが示されています
👉 Mussawar M, et al. Int J Environ Res Public Health. 2023
2. 強い運動(vigorous exercise)は人によってプラスにもマイナスにもなる
- 肥満・過体重の女性では、ランニングやエアロビクスなどの強度の高い運動を週4時間以上行うと、妊娠までの期間が短縮することが報告されています
👉 Russo LM, et al. Hum Reprod. 2018 - 一方、BMIが正常〜低めの女性では、週5時間以上の強い運動は妊娠の可能性を下げるというデータもあります
👉 Wise LA, et al. Am J Epidemiol. 2012 - 運動量が過剰で食事が足りない場合、月経不順や黄体機能不全を引き起こすリスクがあります。
「強い運動」とはどのようなもの?
WHOやCDCの基準では、会話が数語しか続けられないほど息が弾む運動を指します。
具体例:
- ランニング
- 水泳(クロールなど連続で泳ぐ)
- シングルスのテニス
- 登り坂のハイキング
- 時速16km以上のサイクリング
一方、中等度の運動は「会話はできるが歌うのは難しい」程度の強さです(速歩き、軽い水中運動、ゆるやかなサイクリングなど)。
👉 WHO Physical Activity Guidelines
👉 CDC Physical Activity Guidelines
妊活中の方への運動アドバイス
- 目安は週150分(1日30分 × 週5日程度)の中等度運動
- 可能であれば、週2回の軽めの筋トレをプラス
- 強度の高い運動を好む方は、週4時間以内を目安にし、月経周期に変化がないか注意
- 注意サイン:月経が遅れる、排卵が遅れる、黄体期が短い、極度の疲労など → 運動量や強度を減らすサインです
- 必ず十分な栄養・休養とセットで取り組みましょう
まとめ
ほとんどの方にとって、継続的な中等度の運動は妊娠にプラスになります。健康を支え、ホルモンバランスを整え、妊娠までの期間を短くする可能性があります。
ただし、強度の高い運動は体型や生活習慣によって効果が異なるため、無理なくバランスを保ちながら取り組むことが大切です。

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