腸内環境と子宮内フローラの深いつながり ― 妊活で腸を整える意味とは?

はじめに

妊活において、卵子の質やホルモンバランスだけでなく、腸内環境と子宮内フローラ(子宮内細菌叢)の状態が着床・妊娠率に大きく影響することが、最近の研究で明らかになってきています。本記事では、最新の論文を交えて「腸と子宮のつながり」を整理します。


目次

腸と子宮は免疫・ホルモン・菌の移動でつながる

腸‐子宮間の免疫経路

腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオシス)が起こると、腸管での炎症性応答が上がり、炎症性サイトカイン(例:IL-6, TNF-α)などが全身に影響を及ぼすことがあります。これが子宮内膜の免疫環境を不安定にし、着床不全や慢性子宮内膜炎(Chronic Endometritis:CE)などの原因となることがあります。

ホルモン代謝と腸内細菌

「エストロボローム」と呼ばれる腸内菌群は、エストロゲンの代謝・再吸収に関わっており、そのバランスが崩れるとホルモン過多やホルモンの分解産物の蓄積などが起こり、子宮内膜や卵巣機能に影響することがあります。

菌の移動・フローラの共有

腸→膣→子宮といった経路で菌が移動したり、腸内で増えた悪玉菌が膣経由で子宮内に影響を及ぼすことが指摘されています。特に腸内細菌の乱れが膣/子宮内のラクトバチルス比率を低下させる可能性があります。


最新の研究から見えること

以下、最近(2022-2025年)の論文から、腸内細菌叢・子宮内フローラと妊活の関係についての知見を紹介します。

論文主な内容と発見
“The Role of the Gut Microbiota in Female Reproductive Biology” (Mora et al., 2025)腸‐子宮軸(gut–endometrial axis)をレビュー。腸内細菌が代謝物・免疫調節を介して子宮の着床準備性に影響を与える可能性を論じています。PMC
“Distinct gut and vaginal microbiota profile in women with infertility” (Patel et al., 2022)不妊女性は腸内にディスバイオシスがあり、病原性のある菌(Gardnerella, Prevotellaなど)が比較的多いことを報告。腸の乱れが生殖器環境と関連するという証拠を提供。BioMed Central
“Microbiome–Maternal Tract Interactions in Women with Recurrent Implantation Failure” (Kumar et al., 2025)繰り返し胚移植失敗(RIF)の女性では、子宮・腟のラクトバチルス属の割合が低く、病原菌が多い。また、これらの菌構成の乱れが移植成功率と関連している。MDPI
“Bovine lactoferrin suppresses inflammatory cytokine expression in endometrial stromal cells in chronic endometritis” (Nakamura et al., 2022)牛由来ラクトフェリン(bLF)を子宮内膜間質細胞(ESCs)に適用したところ、TNF-αやIL-1βなど炎症性サイトカインの発現が有意に抑制され、AKTやMAPK 経路を通して作用することが確認されました。慢性子宮内膜炎対策としてラクトフェリンの可能性を示す研究。PubMed
“Impact of antibiotic treatment for chronic endometritis on pregnancy outcomes in women with reproductive failures (RIF and RPL)” (Liu et al., 2022)複数の研究をまとめたメタ解析で、慢性子宮内膜炎が治ることで着床率・臨床妊娠率が向上することが示されている。ラクトフェリン単独の研究ではないが、炎症を抑える治療が妊活において重要であることを支持。Frontiers

子宮内フローラと妊娠の関係(最新の示唆)

  • 子宮内細菌叢で ラクトバチルス属が優勢な状態であることが、胚移植アウトカムや妊娠成立率と正の相関があるという報告。Frontiers+1
  • 一方で、ラクトバチルスが少なく、多様性が高い(病原菌が含まれやすい状態)が 繰り返し胚移植失敗(RIF)慢性子宮内膜炎 の患者で多く見られ、改善すると妊娠率が上がる可能性。Nature+1

妊活でできること(研究にもとづく実践案)

  1. 腸のケアを意識する
    発酵食品・食物繊維を十分に取り、プロバイオティクスサプリメントで腸内の善玉菌を増やす。
  2. ラクトフェリンを検討する
    上記の Nakamura et al. の研究では、ラクトフェリンが炎症性サイトカインを抑えることが実証されており、慢性子宮内膜炎等の炎症対策に有望視されています。PubMed
  3. 子宮内細菌叢検査
    子宮内フローラを調べる検査を活用して、自分のフローラ状態(ラクトバチルス比率や病原菌の有無)を確認すると、治療の方向性を立てやすくなります。Varinosなどがこのタイプの検査を提供しています。
  4. 炎症の早期ケア
    慢性子宮内膜炎や子宮内細菌叢の乱れがある場合は、抗生物質治療+プロバイオティクス(またはラクトフェリン)など複合的治療が論文で臨床妊娠率上昇と関連している報告があります。Nature+2MDPI+2

まとめ(研究からのポイント)

  • 腸内環境と子宮内フローラは、免疫・炎症応答、ホルモン代謝、菌の構成など複数のルートで相互作用を持っている。
  • 最新の論文では、ラクトバチルス属の優勢、炎症性サイトカインの低さ、そして慢性子宮内膜炎の治療結果が妊娠アウトカムの改善と関連している。
  • ラクトフェリンなどによる炎症抑制、腸内・子宮内の菌バランスを整える対策が、妊活を支える有効な戦略として研究で支持されつつある。

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