採卵周期に薬が効かない?その原因、実は“FSHR遺伝子”かもしれません!

目次

🧬「遺伝子型に合わせて使う薬を変えることで、妊娠や出産の成功率が上がるかもしれない」

論文タイトル
「FSH受容体N680S遺伝子型に基づいたゴナドトロピン選択は、体外受精後の累積妊娠率および生児出生率を向上させる」Front. Endocrinol., 13 May 2025

体外受精(IVF)の治療では

  • 卵子をたくさん育てるために「ゴナドトロピン」という注射薬を使います(FSH製剤)。
  • これは卵巣に「たくさん卵を作ってね」と刺激を与えるホルモンです。
  • でも…同じ薬を使っても、「よく反応する人」と「反応しづらい人」がいます。

🔑 その差を生んでいるのが、FSHR遺伝子のタイプ(N680S)です

この遺伝子は、卵巣の中でFSHホルモンを受け取る「FSH受容体」を作る設計図の一部です。

3つのタイプがあります:

遺伝子型特徴
NN型(Asn/Asn)薬によく反応するタイプ。少ない薬でも卵がよく育つが、過剰反応するリスクも。
NS型(Asn/Ser)中間タイプ
SS型(Ser/Ser)薬にあまり反応しないタイプ。より多くの薬が必要になりがち。

💡 この研究でやったこと

この論文では、475人の女性に対して、事前にこのFSHRの遺伝子検査を行い、以下のように薬を使い分けました。

遺伝子型使用した薬
NN型再組換え型FSH(rFSH、例:ゴナールFなど)
SS・NS型尿由来FSH(uFSH、例:メノピュールなど)

その結果:

  • 妊娠率が 40% → 51%
  • 生児出生率が 29% → 40% に向上!

つまり、「遺伝子型に合った薬を使うだけで、治療の成功率がぐんと上がった」ということです。

これは例えば、「足のサイズに合った靴を選ぶと、歩きやすくなる」ように例えることができるかもしれません。

薬も「万人向け」ではなく、その人の体質(=遺伝子)に合わせてカスタマイズすることで、

  • 効果が出やすくなり、
  • 副作用や無駄な投与を減らせる、
    という非常に合理的な考え方です。

日本ではまだ一般的でない理由

  1. 遺伝子検査の実施体制が整っていない
     → 保険適用外で高額になりやすく、専門施設でしか行っていない
  2. エビデンス(証拠)が海外中心
     → 日本人での研究が少ないため、医師側も慎重
  3. 医療ガイドラインにまだ反映されていない
     → 標準治療として採用されていないため、クリニックでの導入にハードルがある

🧭 でも、これからの医療は…

このような「個別化医療(Precision Medicine)」が進んでいくことは間違いありません。

海外ではすでに導入が始まっており、日本でも民間の遺伝子検査会社や一部クリニックで導入が進んでいます。

Googleが提供している『23&Me』という遺伝子検査サービスは、199ドルで利用可能です。一度受けると遺伝子プロファイルやメチレーションプロファイル、デトックスプロファイルなどが確認できます。もちろん、今回の論文に書いてあるFSHに関連する遺伝子情報もわかりますが、、、、、、現在日本から購入はできません。残念。

妊活や不妊治療においても、遺伝子型に基づく投薬調整がスタンダードになる可能性があります。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

コメント

コメントする

目次