当院にはたくさんの不妊患者様がお見えになります。
そのうちかなりの頻度でお見受けするのが、甲状腺機能障害。
甲状腺、といえば機能亢進症(バセドウ氏病)、機能低下症(橋本病など)が有名で、圧倒的に女性に多い疾患。 しかし男性患者様のなかにも甲状腺疾患を持つ方は少なくありません。
実は甲状腺疾患と不妊には深いかかわりがあること、ご存知でしょうか?
甲状腺は喉のあたりに位置。15gという小さなサイズとは裏腹にたくさんの血管が集まり毎分100mlもの血液を受け取ります。それだけ大切な働きを担っているということですね。
ここから分泌されるのが甲状腺ホルモン。
体中ほとんどの組織に作用して代謝を亢進させます。
甲状腺ホルモンは下垂体からのTSH(甲状腺刺激ホルモン)により合成・分泌が促進されますが、TSHはその上層にある間脳視床下部からのTRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)のコントロールを受けます。
クリニックでの検査結果にTSH, fT4, fT3の記載がありませんか?
TSHが甲状腺刺激ホルモン、fT3, fT4が甲状腺ホルモンの状態を表します。
ではなぜ甲状腺機能と不妊にかかわりがあるのでしょう?
甲状腺機能低下症の場合、甲状腺ホルモンが低下します。
するとフィードバック機構により、上述のTSHおよびTRHが上昇。
不思議なことにTRHはPRL(プロラクチン)の分泌もコントロール。
プロラクチンとは乳汁を産生させるホルモンですが、同時に性腺刺激ホルモンを低下させ、結果E2、プロゲステロンも低下。妊娠しづらい体となります。
これは本来、授乳中の母体・胎児の成長・赤ちゃんの成長を守るための自然の仕組みですが、それが適切でないときに起こっている状態、ということになります。
TSHの基準値は0.5~5.0μIU/mL。(検査機関により若干異なります)
この数値が高いと甲状腺機能が低下しているということになり、チラージンというお薬を服用してコントロールします。
気をつけたいのはTSHが上記の基準値におさまっている場合、クリニックによっては基準範囲内だからと見過ごされることがあります。
妊娠を希望する際にはTSH<2.5を厳格に守る必要があるので、妊活を考えるかたは予備知識として持っていたいですね。(米国甲状腺学会のガイドラインによる)
特に顕著な症状のない場合、TSHの定期的チェックをお忘れになる方もいらっしゃいます。
しかし妊娠を望まれるのであればTSH<2.5のラインを保っていただくのが賢明でしょう。
次回は甲状腺機能亢進症と男性不妊の関連についてお話しできればと思います。
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