慢性子宮内膜炎Chronic endometritis (CE)
子宮内膜炎とは、子宮内膜に炎症が起きている病態を言います。
細菌感染が子宮内膜炎の主な要因です。
検査の方法は色々ありますが、子宮鏡検査で内膜にマイクロポリープが見えたり、いちごのように内膜が赤く充血している場合は内膜炎を疑います。
内膜にも腸と同じように多くの子宮内細菌が共生していますが、慢性子宮内膜炎では子宮内Lactobacillus細菌叢の低下と GardnerellaもしくはStreptococcus細菌叢の増加が認められ、それが妊孕能の低下と関係しています。
慢性子宮内膜炎の症状と発生頻度
基本的に無症状で一般不妊検査で検出はできません。
不妊症女性の約3%、反復着床不全既往の女性の約30-60%、流産既往のある女性の約9%、習慣流産既往の女性の約40-60%に発生します。
治療
子宮内膜炎は様々な細菌叢に対応する広域スペクトラムの抗菌薬が使用されます。
第一選択:
ドキシサイクリン(ビブラマイシンなど)(100 mg)2回分2×2週間
90%以上の症例で改善しますが、上記で改善しない場合は別な作用のある抗菌薬が使用されます。
第二選択:
シプロフロキサシン(500 mg)とメトロニダゾール(フラジールなど)(500 mg)
2回分2×2週間
上記の服用で99%は改善します。
また、サワシリン、アジスロマイシンなどを服用されている場合は下痢になる場合があるため、整腸剤としてビオフェルミンR錠が処方されることもあります。
我々鍼灸師として考えなければならないのは、なぜこの菌に感染してしまったのか。もっと深く突き詰めると、私達のカラダに共生している菌がなぜカラダに悪影響を及ぼすことになってしまったのかと?
私達のカラダは様々な菌(微生物)と共生することで成り立っています。それらの菌のことをマイクロバイオームと呼びます。
マイクロバイオームとは人体に住む微生物相のこと。例えば腸内細菌など、人の健康に大きくかかわっているとこは知られています。
生殖器(膣、胎盤、卵管など)には生殖器独自の菌が共生しています。
エール大学の生殖免疫学者のギルモア教授は、「人間の身体の常在菌が妊娠維持には極めて重要である」という結果を報告しています。
慢性子宮内膜炎が見つかり、自己判断により鍼灸治療を中断されてしまう患者様が時々いらっしゃいます。
最近は妊娠に関わる免疫因子も明らかになっています。子宮NK細胞 (CD56bright)と細胞障害性の血清NK細胞 (CD56dim)のバランスが崩れることで、妊娠しづらくなります。
子宮内膜の菌と同じように、バランスが大切です。
西洋医学は特定の因子を特定し、治療するのが得意です。一方鍼灸ではカラダ全体、妊娠のための土台を整えるために有効です。
慢性子宮内膜炎が陽性になっても、鍼灸治療は自己判断で中止せず、継続していただくことをお勧めします。
マイクロバイオームについて去年書いた記事です。よろしければ、参考にしてください。
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