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PGS(着床前遺伝子スクリーニング)の臨床研究開始

2月14日、日本産科婦人科学会が、PGS(着床前遺伝子スクリーニング検査)の臨床研究開始を発表しました。

これまで、日本産科婦人科学会は特定の遺伝子異常の有無を調べる着床前診断PGD(Preimplantation Genetic Diagnosis)のみ、一定の条件下で認めていました。

ご夫婦どちらかに重い遺伝性疾患があり、PGDが必要であると医師が診断し、日本産科婦人科学会に認定を受けるなどの手続きが必要であり、認定まで最低でも3か月ほどかかります。

PGD対象疾患など詳しい内容は過去のブログをご参照ください。

(遺伝子の正体)

(出生前診断と着床前診断について)

(体外受精で一度は気になる着床前診断)

 

これに対してPGS(Preimplantation Genetic screening:着床前遺伝子スクリーニング)は、同じく受精卵の遺伝子異常を調べるのですが、特定の遺伝子の異常ではなく遺伝子の数の異常を調べます。

遺伝子は2本が対になって計22組(44本)+性別を決める性染色体のxx、またはxy、総計46本の染色体で構成されています。

この染色体の数の異常を調べることで、着床まで至らない、または着床してもすぐに流産してしまう可能性の高い受精卵を調べるのです。

重篤な遺伝疾患に限定されているPDGに対し、染色体の数的異常でスクリーニングをするPGSは命の選別にもつながるのではないかとの議論があり、日本産科婦人科学会のガイドラインでも臨床応用を認められていません。そのため、現在日本ではごく一部の医療機関でのみ実施されているのが現状です。

しかし、世界的にみるとPGD,PGSなど着床前診断はアメリカ、オーストラリア、フランス、中国、韓国など多くの国で行われており、日本でも不妊治療を受ける方の増加、高齢化により多くの患者様からその実施が望まれていました。要望の高まりを受け、日本産科婦人科学会は2015年2月に臨床研究実施を承認する旨の発表を行い、具体的スタートに向けての動きが始まっていました。

そして発表から2年を経て、2017年2月に臨床研究の実施が発表された次第です。

 

*実施内容

対象

*体外受精を過去3回以上試みても妊娠しない

*流産を2回以上経験している

*35歳から42歳までの女性

です

(その他施設により規定があります)

 

実施方法

PGSを実施するグループと非実施グループに無作為に分けて出産率を比較します。

このような方法をランダム化比較試験といいます。

 

実施機関

名古屋市立大学などの3大学および臨床施設数か所、解析には東京女子医大など3施設が予定されているとのことです。発表に先立ち、臨床試験の参加者を募る施設もでています。

 

検査方法

今回PGSに使用されるのは「アレイCGH法」と呼ばれる検査方法です。

CGHとはcomparative genomic hybridization(比較ゲノムハイブリダイゼーション)の略で、検査対象受精卵のDNAと、正常細胞のDNAをコンピューターで比較解析してその量差から染色体異常の有無を調べます。

まず受精卵が8分割ほどした段階で細胞の一部を取り出し、受精卵由来のすべてのDNAを増やします。そして検査対象のDNAを色に、比較対象に使用する正常DNAを色に、それぞれ蛍光染色し、この二つを掛け合わせ(ハイブリッドさせ)ます。

DNAは自分と同じ塩基配列を持つ箇所に結合するため、両者の数が同じならが混ざって色に、数が少なければに、多ければに示されます。

つまり、色い部分の染色体数は正常の部分は染色体数が少ないの部分は染色体数が多い(トリソミー等)ことが疑われます。

aCGH法で正確に診断できる確率は97%以上と言われています。しかし、DNAを増幅する過程でエラーなどが起こりうるため、間違いの可能性はゼロではありません。また、性染色体を含めたすべての染色体をスクリーニングする性質上、PGSは受精卵の性別を判定することもでき、習慣流産などの負担を減らすことが目的にもかかわらず安易な産み分けにつながるのではないかとの心配もあります。

また、PGSは着床後の流産率は下げてくれますが、妊娠率を上げてくれるわけではありません。採卵当たりの妊娠率で言えば、移植できる胚が減る分、妊娠率は下がることも考えれらます。

 

それでも、何度も流産を繰り返すことの心と体への負担は計り知れないものです。

流産の主な原因は染色体異常で、流産の約6割には何らかの染色体異常がみつかります。染色体異常がある受精卵は90%が着床しない/または着床しても化学流産に終わります。

そんな辛さを回避できるのは不妊に悩まれるご夫婦にとって明るい情報であることには間違いありません。

 

日本産科婦人科学会の発表では今後3年間で300人の臨床研究を行い、PGSが流産の減少に有効か医学的効果の検証をすすめるとのことです。

多くの先進国で実施されているPGS。

私たちも患者様からたびたびPGSを望む声をお聞きします。

今後日本式PGSがどのような形に進むのか、動向を注視していきたいと思います。

 

 

鍼灸師

村上華子

 

 

参考引用

高度生殖医療技術研究所

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