習慣流産について

妊活応援ブログ | 不妊鍼灸治療のアキュラ鍼灸院

今日は、 習慣流産 についてのお話です。
想像するには、ちょっぴり悲しいお話かもしれないけれど、知識として持っておくと、何かの役に立つかもしれません。

習慣流産について

習慣流産ってなに?

流産を3回以上繰り返した場合を指します。
流産は多くの妊娠で見られ、誰にでもおこる病態ですが、3回以上繰り返す場合は両親に何らかの疾患がある場合もあります。
精査を行うことも可能ですが、原因がはっきりしない場合も多いのが特徴です。
今日のブログでは、その中の一部についてお話します。

どんな原因が考えられるの?

以下のような原因が考えられています。
(1)内分泌機能異常
(2)自己免疫異常
(3)クラミジアなどの感染症
(4)子宮筋腫、子宮の形の異常
(5)転座
(6)カップル間の移植免疫的相性

今回はこれらのうち(1)内分泌機能異常についてお話します。

内分泌機能異常とは?

内分泌系=ホルモン系の異常が原因のものを指し、以下のようなものが挙げられます。

黄体機能不全
黄体の機能が悪く、プロゲステロンの分泌量が減ってしまう病態。

【原因】
卵胞刺激ホルモンや黄体化ホルモンの分泌が不十分
→ 卵胞発育が障害 → 黄体からのプロゲステロン分泌低下
プロゲステロンの分泌不足により、着床環境が悪化し流産につながると考えられています。

【治療】
黄体ホルモン補充

高プロラクチン血症
産後でもないのにプロラクチンの値が必要以上に高い状態を指します。
プロラクチン=乳汁を出すことに関与(体が産後の状態)
高プロラクチン血症=体が産後と勘違い=妊娠しにくい

【原因】
薬(胃潰瘍の薬・抗うつ剤・降圧剤等)の長期服用、下垂体の腫瘍、ストレスなど

【治療】
薬(胃潰瘍の薬・抗うつ剤・降圧剤など)の服用中止、腫瘍除去、ドーパミン製剤(パーロデル、テルロン、カバサール)などの内服薬処方など

甲状腺機能低下症
前述の、高プロラクチン血症を引き起こします。

【原因】
甲状腺が慢性炎症を起こして機能が低下(自己免疫障害のひとつ。橋本病)、ヨウ素の摂取不足(甲状腺ホルモン自体を合成できない)、甲状腺を摘出、放射線療法により甲状腺機能を廃絶させた場合など。

【治療】
甲状腺ホルモン製剤処方

糖尿病
高血糖の場合、胚・胎児の細胞分裂や代謝過程に異常をきたし、流産しやすくなると言われています。

【原因】
先天性、過食(による肥満)、飲みすぎ、運動不足、不規則な生活、ストレスなど

【治療】
経口血糖降下薬やインスリン注射で血糖のコントロール。
食事や運動・ストレスに配慮することも大切です。

上記疾患に該当したら?

もしも習慣流産の原因となる疾患をお持ちであれば、妊娠前にかかりつけのお医者様や不妊治療のお医者様に、ご相談なさることをお勧めします。
想定できるリスクは事前に排除してしまいましょう。

今日は、自己免疫異常が原因と考えるものについてお話させて頂きます。

自己免疫異常とは?
体内に入ってきた異物を認識し排除する役割を持つ免疫系が、自分自身の正常な細胞や組織にまで過剰に反応し攻撃を加えてしまうことで症状を起こす、免疫寛容の破綻による疾患の総称です。
その中でも最も有名なものは抗リン脂質抗体症候群です。
抗リン脂質抗体症候群
自己抗体ができることで、血液凝固異常を引き起こす病態です。

自身の身体を異物として認識し、自己抗体を産生。
その結果として、血液が固まりやすくなる → 血流障害を起こす → 流産
このような機序が考えられています。

【原因】不明

【治療】低用量アスピリン療法、ヘパリン療法など

いずれも、血液凝固を低下させ、血栓ができないよう、血流が滞らないような状態にしてくれます。

自分はそれに該当するの?
もしも流産を繰り返していて、自己免疫異常の既往があれば、お医者様にご相談なさってはいかがでしょうか。
想定できるリスクは事前に排除しましょう。

次に、感染症が原因と考えられるものについてお話させて頂きます。

どんな感染症が原因になるの?

クラミジア梅毒細菌感染が可能性として挙げられます。

クラミジア
性感染症として有名であり、不妊の原因としても有名です。
クラミジア・トラコマチスに感染することでおこります。
炎症により、プロスタグランジンが産生され、陣痛発来を誘発するため早産や流産を招きやすいとされています。

梅毒
性感染症として有名ですが、日本においてはペニシリンの普及以降減少しています。
トレポネーマ・パリダムに感染することでおこります。
流産だけでなく、母子感染もあるので、妊娠初期の梅毒検査は母子保健法で義務付けられています。

その他細菌感染
妊娠中は免疫が寛容になっているため、細菌感染を起こしやすい時期でもあります。
細菌感染の場合は不正性器出血、帯下異常、外陰部掻痒感といった症状があり、気づきやすいものが多いです。
異変に気づいた時は、早めに治療を受けましょう。

どうしたら良い?

クラミジアや梅毒は、妊娠前にチェックして、リスクは事前に減らしておきましょう。
そして、その他の細菌感染に関しては、「おかしいな?」と思ったら、放置せずに、お医者様にご相談なさって下さい。

次に、子宮筋腫、子宮の形の異常(子宮奇形)が原因と考えられるものについてお話させて頂きます。

どうして子宮の筋腫や形の異常(子宮奇形)が原因になるの?
受精卵の着床場所に筋腫や形の異常があると、着床後の妊娠経過に影響を及ぼすためです。

子宮筋腫
子宮筋層を構成する筋に発生する良性の腫瘍です。
婦人科系疾患の中で最も多く、生殖年齢の女性の20-30%に見られますが、筋腫の位置によっては問題ない場合もあります。
以下の順に不妊や習慣流産の原因になります。
漿膜下筋腫 < 筋層内筋腫 < 粘膜下筋腫

子宮の形の異常(子宮奇形)
いくつかの種類の子宮奇形がありますが、多くの場合は無治療でも問題ないとされていますが、一般女性に比べて流産を繰り返す女性の方が子宮奇形の割合が多いのも事実です。

以下、頻度の多い奇形について述べます。
弓状子宮:習慣流産とは関係がないとされています。
中隔子宮・双角子宮
中隔部は血流が乏しいため、中隔部に着床をすると流産の原因となります。
無治療でも子宮内膜に着床すれば問題無いため、多くは治療不要とされます。
ただし、習慣流産の場合は、中隔切除を行うこともあります。

こちらのブログをお読みの方の多くは、既に検査済みと思いましたが、今回は、形状的な問題に関してお話させていただきました。

次は、転座について。

なかでも、習慣流産の原因としてよく名前の挙がる、相互転座(均衡型・不均衡型)ロバートソン転座についてお話させて頂きます。

そもそも、転座ってなに?

転座とは、ある染色体の一部もしくは全部が、もとの染色体からちぎれて他の染色体にくっついたりしたものをいいます。

これらの染色体異常のある方は、染色体の総量に過不足ないため、本人はほとんどの場合、異常を知らずに生活することができています。

下図:矢印左=正常な染色体 矢印右:均衡型相互転座のある染色体
習慣流産について

下図:矢印左=正常な染色体 矢印右:ロバートソン転座のある染色体

習慣流産について

どうして転座は起こるの?

なぜ転座が起こるのかは、まだわかりません。

均衡型転座の染色体について

均衡型相互転座の染色体を持つ方からは、以下の A ~ D いずれかの組み合わせの精子もしくは卵子が作られます。

習慣流産について

A:染色体に異常はありません

B:2の染色体は量が少ないですが、2の染色体のちぎれたものが4の染色体に
ついているため染色体の総量はAの状態と変わりません(均衡型転座)

C:染色体に重複している部分があります(不均衡型転座)

D:染色体に欠損している部分があります(不均衡型転座)

ロバートソン転座の染色体について

ロバートソン転座の染色体を持つ方からは、以下の E ~ H いずれかの組み合わせの精子もしくは卵子が作られます。

習慣流産について

E:染色体に異常はありません

F:4の染色体はありませんが、2の染色体に4の染色体がくっついているため、

染色体の総量はEの状態と変わりません

G:染色体が欠損しています

D:染色体が過剰です

流産につながる転座の状態

上記A・Eは染色体に異常がないため、問題にはなりません。

B・Fは、染色体の総量に変わりはないため、あまり問題になることはないようです。この場合、出生児はB:均衡型相互転座保因者、F:ロバートソン転座保因者となります。

CD・G・Hの場合、染色体の重複・欠損・過剰があるため、高い確率で流産につながると考えられています。

言葉ではご存知の転座、わかりやすいように少々内容を簡素化して説明させていただきましたが、なんとなくお分かりいただけましたか?

また、自分もしくはパートナーに転座があるからといって、子供は望めないわけではないことも、ご理解いただけたでしょうか。

次は、カップル間の移植免疫的相性についてお話させて頂きます。

移植免疫的相性ってなに?

臓器移植時の拒絶反応に似た免疫的な相性の悪さのことを指します。

各種検査(甲状腺ホルモン検査・血糖検査、自己抗体検査、染色体検査、超音波検査、X線造影検査、細菌等の検査)などを行っても習慣流産の原因が不明な場合に、疑われます。

生き物には、自分の細胞・臓器に対しては攻撃をしないけれども、異物が体内に入ってきた場合には攻撃をするという、「免疫反応」があります(外来の物質に対する免疫)。

これが、異常な反応をすると、おなかの胎児に対して攻撃をしかけ、流産となってしまうことがあります。
胎児に含まれる夫の遺伝子=「他人」の遺伝子

ということで、母体が拒絶するために起きるいわれています。
これを、同種免疫異常といいます。

同種免疫異常は調べられる?

リンパ球混合培養という検査で調べることができます。

これは、妻と夫の二個体のリンパ球を混合培養し、妻に夫のリンパ球に対する抗体がどれだけあるかを調べる検査です。

それがあったらどうする?

夫のリンパ球移植を検討します。

免疫療法のひとつで、夫の血液からリンパ球を分離し、妻に移植します。

これにより、流産しなくなる率が高まると言われています。
流産しなくなる率=80%強とも。

ただ、移植片対宿主病(GVHD:臓器移植に伴う合併症のひとつ)が現れることが報告されていますが、発症率はごく稀だそうです。

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様々な原因により繰り返される流産ですが、反復流産・習慣流産の実際の頻度はそれぞれ理論上の頻度よりも高い値となっています。

1回の自然流産の割合は15%
2回の自然流産(反復流産)の理論値は2.25%(実際は4.2%)
3回の自然流産(習慣流産)の理論値は0.34%(実際は0.88%)

そこには、今回まで6回に分けてお話をさせていただいた要因が関係しているのではないかと考えられています。

想像するには、悲しいお話ですが、習慣流産についての知識、持っておくと役に立つことがあるかもしれません。
頭の何処か、片隅にでもしまっておいて頂けたらな、と思います。

鍼灸師 平井香菜

参考;公益社団法人 日本産科婦人科学会(流産・切迫流産)
参考;Wikipedia、杉ウィメンズクリニック
参考;Wikipedia、病気がみえる(9)
参考;着床前診断ネットワーク、EuroGentest
参考;Wikipedia、病気がみえる6・9、セントマザー産婦人科医院

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