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息詰まり

私たち鍼灸師は患者様のお身体を診させて頂く際に、腹診といってお腹の状態も非常に大切にしています。どの部分が硬いか、痛みがあるか、という反応を診て東洋医学的に判断し治療に役立てていきます。

常日頃から思うことは、やはりお身体に不調を訴えている方はお腹の痛みや硬さ、冷えを訴えている方が非常に多いです。下腹部の冷えであったり、上腹部の硬さであったり。もちろんこれは突然できたものではなく、日常から積み重ねられて出来上がった今のお身体からのサインなのです。

それでは、どういったところから今のお身体が出来上がってきたのか。注目して頂きたい1つのポイントとして、「呼吸」があります。

私たち人間は、母なる海から生まれ、えら呼吸に始まり、陸に上がり、肺呼吸になり、と進化を遂げて現在に至ります。魚であった頃のえらは哺乳類へと進化する過程で閉じていき、1つだけ残った穴が私たちの耳となっています。水中と空中とで酸素の摂り方も変わり、肺呼吸にする為に私たちの祖先は呼吸筋として有名な「横隔膜」を作りました。

しかしここで1つの問題が出てきたのです。大きなリスクを背負って陸に上がってきた祖先は半ば強引に横隔膜を作りました。ご存じの通り、横隔膜は「息を吸う為の筋肉」です。では逆に、「息を吐く為の筋肉」とは何でしょうか?調べればたくさん出てきますが、これら呼気筋は横隔膜のように専門の筋肉ではなく、別の仕事の片手間に息を吐く作業を行っているのです。この呼吸の筋肉のアンバランス。これこそが肺呼吸への進化の過程での1つの問題、そして、特に現代人において大きな問題となるのです。

最初に申し上げましたように、お腹の硬さは身体の不調のサインです。その原因として、筋肉のアンバランスゆえの横隔膜の過緊張が起こります。横隔膜が緊張すると、息を吸います。ですが、弛緩(ゆるむこと)ができないと今度は吐きづらくなってしまいます。ただでさえ吸う側の筋肉は専門職がいるにもかかわらず、吐く筋肉は片手間にやっているボランティアの方々ばかり。息が吐けないと新しい空気が入ってくることができず、もっと呼吸がしづらくなります。息が詰まって吐けない。つまり「息詰まり」。昔の日本人はもしかしたら、こうしたことを身体で感じていたのかもしれません。

「考えが行き詰る」
「計画が行き詰る」

漢字は違えど、ある一定のところから動けなくなることを私たちは「いきづまる」と言います。さぁリラックスしてください、と言われた時、皆さんは息を吐きますか?吸いますか?おそらく大半の人が「ふぅーー」と息を吐くのではないでしょうか?

何かが「行き詰る」時、あなたの身体も「息詰まっている」かもしれません。そんな時こそ「息抜き」をして、身体も気持ちも、さらには呼吸も楽にしていけると良いですね。

参考文献:「海・呼吸・古代形象」三木成夫、うぶすな書院、

鍼灸師 西村 亮二

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