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エンブリオロジスト

今回はエンブリオロジスト、別名「胚培養士」についてです。
卵巣から採卵した卵子を精子と人工的に授精させたり、採卵した卵子、あるいは受精卵を管理する人たちです。
このエンブリオロジストは実は国家資格ではありません。 医師がこの仕事を行っている施設もあるようですが、医師が診療から胚培養まで行うとミスが起こり易い為、胚培養士を雇っているところが多いようです。
ではどんな資格をもった人たちがエンブリオロジストになるのでしょうか?
どんな仕事でどんな風に卵子を扱っているのでしょうか。
そこで「エンブリオロジスト 受精卵を育む人たち」という本を読んでみました。
初版が2010年なので少し古い情報ですが、ご参考になればと思います。

まずはエンブリオロジストとして仕事をする人の7割は臨床検査技師、その他は農学部・畜産学部出身が多いのだそうです。
農学部・畜産学部出身者、というのは動物学を専攻し、ウシやネズミの卵子・精子を扱ってきたということです。
公的な資格はないものの、認定資格はあるようです。日本哺乳動物卵子学会認定「生殖補助医療胚培養士」、日本臨床エンブリオロジスト学会認定「臨床エンブリオロジスト」の2つです。
なぜ哺乳動物卵子学会なるものが認定資格を扱っているのかというと、「現在の生殖補助医療はヒト以外の哺乳動物の領域で研究されてきた技術が応用されている」からだそうです。
そのため、採卵や顕微授精などの技術も始めは動物の卵子で訓練するところもあるようです。

卵子の扱い方はどうでしょうか。
設備に関しては、インキューベータ―という子宮の役割を果たすもので卵子を管理し、常に胚にとって最適の環境を作り出すために温度は37度、二酸化炭素濃度6%、酸素濃度5%と体内と同じように設定されている、ということです。
下部に張った水が蒸発することで100%の湿度を保っている為、菌が入ってしまうとすぐにカビが発生するので管理には気を配る必要があるそうです。そのため、インキューベーター1台1台を毎月掃除するそうです。1台の掃除に30分ぐらいはかかるそうなので、何台もある施設では掃除だけで大変そうです。
また、ラボ自体も室温を卵子のために28度から30度に設定するそうです。 夏はかなり暑そうですね。
照明もお腹の中の明暗に合わせるのでギリギリ可視できる程度だそうです。
ここでも掃除は必須である施設では業務終了後にスタッフ全員で毎日天井まで奇麗に掃除するそうです。
大事なものを扱っていると思えばこそできることですね。

仕事内容はどうでしょうか。
卵子・精子の取り違えミスを防ぐためにはダブルチェックを行っているようです。
卵子や精子が入った容器に張られた名前の確認することで卵子・精子所有者の取り違え防止を行い、またそれを複数人数で確認したり、等の工夫がされています。胚培養士が一人しかいないラボでは作業の要所要所でデジカメで写真を取って確認作業をするなどの工夫もされていることがわかりました。
検卵に関してもダブルチェックをすることで、採った卵を1個でも採り逃さないようにわずかな可能性でも無駄にしないための努力をされているようです。

顕微授精は長くても1分、短ければ30秒で行うそうです。
長い時間をかけるとそれだけ卵子にストレスを与えてしまい、受精はしても成長がストップしてしまうこともあるとか。
一個一個の卵子の性質が違うため、それぞれの状態にあわせてその場で判断し、精子を卵子の中に置く、という作業は責任重大でもあり、且知識や技術も求められる「やりがいのある」仕事であり「ストレスの多い」仕事でもありそうです。
その為、各エンブリオロジストの技術には格差があるようです。一通りの手技ができるようになるには2年かかるといわれているようですし、一人立ちして仕事ができるまでに3~5年だそうです。
また、技術レベルを維持するには年間100件程度の採卵数があるのが望ましいという記述もありました。

このような大変なお仕事とも言えるエンブリオロジストは自分の仕事をどのようにとらえているのでしょうか。
プレッシャーが大きく、常に緊張感を伴う仕事であり、その反面地味な作業の繰り返しもあり、なんとなく就職した人には続けにくい仕事のようです。 自分の仕事が意味がある、あるいは卵を美しいと思って魅了される人などでないと続かないようです。
ある若い女性のエンブリオロジストは友達と合う約束した日が急に採卵の日になったり、夜に採卵があったりして、友達付き合いができなくなったとありました。 
体調が悪くても変わってもらえない(点滴しながらも仕事をしたことも!)、「気持ちがへこんでいる時は自分のプライベートを捨ててまでなんでこんなに頑張らなくてはいけないのかと思ってします」というコメントも目にしました。
卵に向き合う怖さに慄いて辞めて行く人、単調さに飽きて生活のためだけに仕事をするあるいは辞める人などもいて様々です。
反面、ある女性は、仕事と子育てとの両立が難しい仕事なので、仕事に集中するために産まないことを選択したです。
「他の人に子どもができればそれで満足」、ということでした。
男性のエンブリオロジストでも、患者様の感謝の言葉を聞いてこの仕事の重要性を理解した人などもいるようでした。
人間誕生の場で働くことに誇りや意味を感じて日々の仕事に向かっている方々も多いとありました。

調べる程に大変なお仕事だとわかり、そこに従事する人間の意識の高さが求められることを知りました。
しかしながら、一人一人は普通の人間ですから、個人の幸せもしっかり確保できないなら、全体の高い水準を維持するのも難しいのではないかと思います。
話の中で患者様と接して仕事の重要さを理解したり、もっといい仕事をしたい、とモチベーションを上げたりしている様子がみられましたから、医師と患者の対話だけでなく、胚培養士と患者様との対話ももっと増やすことで自分の仕事への誇りがさらに芽生え、やりがいのある仕事へと変化していくのではないかと思いました。

鍼灸師 今井佳子

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