フェマーラを使用している患者様が増えてきた理由
一般的な排卵誘発剤としてクロミッドがありますが、最近ではフェマーラを使用している患者様が増えてきました。
なぜかというと、当院へ通院されている患者様で、加藤レディースクリニック(KLC)、もしくはそのフランチャイズクリニックへ通院されている患者様の数が増えたからです。KLC以外では、フェマーラを使用しているクリニックはほどんどないのではないでしょうか?
フェマーラの使用が不妊治療専門クリニックにて敬遠されがちな理由としてはフェーマーラの副作用として、催奇形性の問題があるからです。
新橋夢クリニックのウェブサイトの情報によると、催奇形というリスク回避のためにフェマーラを生理3日目から3日間のみ服用。3日にすることにより、採卵日あたりにフェマーラが体内に残存可能性をなくします。また、リスクに最大限に配慮するといったスタンスをとり、その周期には移植せず、いったん凍結保存します。
フェマーラとはアロマターゼ阻害薬の一種で、卵胞、副腎や脂肪組織で作られるアンドロステンディオンをエストロゲンに変換する酵素を阻害する薬です。この結果、卵胞のホルモン感受性が亢進し、少量のFSHでも発育を続けるようになります。フェマーラ自体に排卵を促進する効果はありませんので、複数の卵胞が育つことはありません。ですから、確実に採卵したい場合などは敬遠されがちです。
一方、クロミッドは視床下部に働き、GnRHの分泌を促進、またエストロゲンのレセプターと合体して、エストロゲンの分泌を認識しにくくする作用があります。GnRHの分泌が促進されるので、複数の卵胞が育つことがあります。ただし、欠点としては抗エストロゲン作用が逆に頚管粘液の量の減少や子宮内膜の薄化を招く原因となることです。
新橋夢クリニックにおいては、独自の刺激法について、ウェブサイトにて説明をしていますので、よろしければ参考にしていただければと思います。
フェマーラとクロミフェンの違いについて
よく患者様よりフェマーラとクロミフェンの違いについて聞かれますのでお答えします。
フェマーラはノバルティスファーマという製薬会社から発売されている商品名で、一般名(有効成分)はレトロゾールと言います。
レトロゾールとはアロマターゼ阻害剤、閉経後乳癌治療剤として分類されています。
アロマターゼ阻害剤とはアロマターゼというエストラジオールを産生するために必要な酵素を阻害します。するとエストラジオールが生成できなくなります。その結果卵胞のホルモン感受性が亢進し、少量のFSHでも発育を続けるようになります。
フェマーラは本来は閉経後乳癌治療薬として開発されました。乳癌は女性ホルモン(エストラジオール)に依存して発育、増殖するホルモン依存性の高い悪性腫瘍です。フェマーラはエストロゲン産生を阻止し、その結果、腫瘍の勢いがなくなり、病状がおさまります。
フェマーラは排卵誘発剤としてクロミフェンに匹敵する排卵誘発効果が得られています。ただし残念ながら日本では排卵誘発剤としては保険適応がされていないため自費使用となり、クロミフェンと比較するとコストが高くなります。大体1錠800円~1000円程度します。
フェマーラの特徴はクロミフェンの副作用である子宮内膜が薄くなったり、頚管粘液が減少したりといった副作用が少ないことです。
排卵誘発効果はクロミフェンと同等であり、かつ流産率が少ないと報告されています。特にPCOS症例には効果的であると報告されています。
この薬を使う上で注意しなければならないのは、卵胞の発育と血液のエストラジオール値が比例しないことです。理由はフェマーラがエストラジオールの産生を阻害する薬だからです。よって、エストラジオールの変化を予想しにくいために、排卵済になってしまうことが多々あります。エストラジオール値の測定が難しいため、卵胞の大きさで採卵や排卵のタイミングを見ていく必要がでてきます。
参考文献
両角レディースクリニックブログ
https://ameblo.jp/kazutom/entry-10943661411.html
新橋夢クリニックウェブサイト
https://www.yumeclinic.net/
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