近年、男性不妊の原因の一つとして「葉酸代謝異常」が注目されています。 精液所見において、乏精子症・奇形精子症・無精子症などの異常と葉酸代謝に関わる遺伝子多型(特にMTHFR遺伝子)との関連が報告されています。
なかでも、アジア人男性において「MTHFR C677T多型のTT型」は、男性不妊の有意なリスク因子であることが多数の研究で示されています。さらに、受精率や胚盤胞への到達率が悪いケースでも、葉酸代謝異常が関係している可能性があるとされており、体外受精や顕微授精(IVF/ICSI)の成功率にも影響を与える可能性があると考えられています。
そんな研究の一つをご紹介します(Reproductive Biology and Endocrinology volume 22, Article number: 133 2024):
Liら2024によるシステマティックレビューとメタ解析では、46の研究・20,639名を対象に、以下のような結果が明らかになりました:
- MTHFR C677T(TT型):男性不妊および精子異常と有意な関連(特にアジア人で強い)
- MTHFR A1298C、MTRR A66G:明確な関連性は見られず
- MTR A2756G:一部のモデルで男性不妊との関連が示唆される
この研究から、遺伝的に葉酸代謝が低下している男性は、精子の形成や成熟、DNAの安定性に問題を抱えるリスクがあることがわかってきています。
🧬 遺伝子検査 × 栄養管理が鍵
今後、MTHFR遺伝子など葉酸代謝に関わる遺伝子のスクリーニングと、適切な栄養補助(活性型葉酸など)が、男性不妊治療の新しいアプローチとして期待されています。
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