耳鳴りとは、耳の中、あるいは頭の中で本来ないはずの音が聞こえている状態を言います。
蝉が鳴いているような「ジー」という音であったり、高音の「キーン」という音であったり、低めの「ゴー」という音であったりします。ときには音楽のように聞こえたりすることもあります。耳鳴りによって不眠や鬱にまで発展することもありますが、ご本人のつらさが客観的に分かってもらいにくいため、患者様の精神的苦痛が増すケースが多いようです。ここでは耳鳴りの分類、原因、各治療法と最後に私たちの専門領域であります鍼灸による耳鳴りの考え方を書きました。耳鳴りで悩んでいる多くの方の参考となれば、幸いです。
耳鳴り 薬を使う方法
1.a 内服薬
確実に耳鳴りを治す薬はありませんが、飲んでも意味がないというわけでもありません。じゅうぶん医師と相談の上、服用してください。
●代謝改善剤
内耳や中枢神経の活動を回復させる作用があります。
・アデノシン三燐酸(ATP)・・(アデホス・ATP錠など)
・ユビデカレノン・・(ノイキノン・ユビキノン)
●循環改善剤
内耳の循環を改善されることにより、機能を回復させます。
・ ストミンA 耳鳴治療薬として有名です。
・ カルジノゲナーゼ・・(カリクレイン・カルナクリン)
・ ニセルゴリン。(サアミオン)
・ イブジラスト・・(ケタス)
・ 塩酸ジフェニドール・・(セファドール)メニエール病でよく使われます。
メシル酸べタヒスチン・・(メリスロン)
●ビタミン剤
・ビタミンE製剤・・(ユベラニコチネート)
末梢血流の改善や血小板凝集抑制、脂質代謝改善を期待して投与されます。
・ビタミンB12製剤 末梢神経の障害を治療するために使われます。
メチコバール
コバマイド
メコバラミン
●筋弛緩剤
顎関節症や頚部の筋肉の緊張や肩こりからくる耳鳴りに使われます。
・塩酸エペリゾン
ミオナールアテネス、サンバゾン、トルミナール、ミオナベース
・塩酸チザニジン
テルネリン
●抗てんかん剤
脳の異常な興奮(スパーク)を抑制します。耳鳴りと脳とは深く関係があるため、処方されることがあります。
・カルバマゼピン・・(テグレトール)
・ アレビアチン
●抗うつ剤
耳鳴りがあることで二次的に起こってくる不安や抑欝状態の改善のための薬。
・ ドグマチール
・ トリプタノール
・ ルボックス
ルジオミール
●抗不安薬(精神安定剤)
耳鳴りがあることで二次的に起こってくる不安や抑欝状態の改善のための薬。
・ セルシン
・ リーゼ
・ デパス
メイラックス
●睡眠薬
耳鳴りが気になって不眠になる方がいます。不眠が続くと体調が崩れ、自律神経の乱れにつながります。それがさらに耳鳴りを悪化させることもあり、充分な睡眠を得るために睡眠薬が処方されることがあります。睡眠薬の安全性はずいぶん高まってきましたが、医師と充分相談の上、服用方法などをきちんと守って使ってください。
・ ハルシオン
・ アモバン
・ レンドルミン
・ ネルボン
●漢方薬
漢方薬は長いスパンで飲み続けることで効果が出ると言われています。8週間は継続して服用することが必要です。ただし、どの耳鼻科でも処方してもらえるものではなく、漢方に詳しい医師でなければ難しいでしょう。漢方薬局などで買い求めることになりますが、その場合は保険の適応外であり、自費負担になります。
また、いくつかの病院で漢方薬を処方されている場合は、飲み合わせの問題などがありますので、必ず医師に相談してください。
耳鳴り 薬を使う方法
1.b 注射
●キシロカイン療法
キシロカイン(リドカイン)という麻酔の注射をする方法です。歯科で歯ぐきに打たれる麻酔薬のようなものです。この薬を静脈に注射すると耳鳴りがおさまる事が知られています。これは、過敏になっている耳の神経の活動が麻酔によって抑制されるためと考えられています。
必ずしも全員に効果があるわけではありませんが、注射を打った後の数秒から数時間ほどは耳鳴りの音が変わったり、小さくなったり、消失したりすることがあります。ほとんどの場合、その効果は一時的なものでしかありませんが、中には長く効果が持続することもあります。
耳鳴りの改善薬としては唯一効果が明らかになっている薬ですが、ショックや中毒などの深刻な副作用の危険もあり、投与する上では慎重にならざるを得ません。ほとんどの場合は数時間しか効果が持続しないことを考えると、危険性のほうが高い治療といえるかもしれません。
●ATP製剤
内服薬として使われるATP製剤を注射する方法です。
●ビタミン剤
内服薬として使われるビタミン剤を注射する方法です。
耳鳴り 薬を使う方法
1.c 鼓室内注入
鼓膜に注射し、内耳まで薬液を浸透させようとする治療法です。静脈注射ではなく、直接患部に薬液を入れるので、より高濃度の薬液が内耳に到達すると考えられます。
●ステロイド注入
ステロイドホルモン剤には強力な消炎作用があるので、内耳に炎症があると考えられる場合に行われることがあります。ただし、この治療に効果があるかどうかは医師の間でも見解が分かれているのが現状です。
●キシロカイン注入
麻酔薬を直接内耳に注入する方法です。ただし、内耳には音を感じる器官だけでなく、平衡感覚を感ずる器官もあるため、副作用として猛烈なめまいが数時間にわたって起こります。したがって入院した上での観察、管理が必要になります。かなりの苦痛をともなう治療であることは間違いありません。しかも麻酔の効果は一時的でしかないことから、この方法を選ぶ医師は少ないと思われます。
耳鳴り 音を利用した治療
2.a マスキング(マスカー)療法
マスカーという雑音の出る器械を使って耳鳴りを抑えるものです。
大半の耳鳴り患者では、大きな音を聞くと耳鳴りが消えてしまうという現象があります(マスキング現象)。さらに、大きな音を聞いた後では、再び静かになってもしばらく耳鳴りがおさまっていることがあります(耳鳴りの後抑制)。
マスキング(マスカー)療法は、これらの現象を利用した治療です。耳鳴りが気になりだしたら、器械からの雑音を聞くことで耳鳴りをコントロールしていきます。
中には、後抑制を利用して耳鳴りをコントロールできるようになる患者さんもいます。そういう方は、マスカーで音を聞くとしばらく耳鳴りがやむと言います。耳鳴りがやんでいる時間は、数分間から数日と、かなりの個人差があります。
【治療】
まず、聴力と耳鳴りの検査をします。ピッチマッチテスト、ラウドネスバランステスト、マスキングレベル、レジデュアルインヒビションテストを行い、耳鳴りがどのような高さで、どの程度大きく聞こえているか、その耳鳴りはどのくらいの大きさの音を聞かせると消えるか、また消えた後耳鳴りが再開するまでどのくらいの時間がかかるかを調べます。
それらの検査でわかった数値に合わせ、マスカーの音質を調節します。ただし、このマスカーは現在日本では販売されておらず、海外から輸入するか、MDなどで代用する必要があります。自分で耳鳴りの音に似た音を探して録音すれば作ることもできます。音叉の音、笛の音、テレビの雑音など、もっとも似ている音を探して録音し、耳鳴りが消えるか小さくなる音量で聴いてください。
海外の報告によれば、この治療法によって4割から6割の患者さんに効果があったそうです。ただし、この数字は医師の管理のもとに行われた治療の結果です。
耳鳴り 音を利用した治療
2.b TRT(療法)
TRT(療法)とは1990年代にアメリカで始まった治療で、ここ数年欧米では急速に普及してきています。この治療の特徴は、耳鳴りを消すのではなく、耳鳴りが気にならないようにする(順応させる)という点です。発想の転換ともいうべき治療法ですが、考えてみれば、私達の生活の中にも音はあふれています。たとえば、ずっと回っている換気扇の音は気になりませんが、切れた瞬間に「換気扇が回っていたんだ」と気づきます。逆に、静かな寝室で眠れないと、普段気にもとめない時計の小さな音が気になったりします。TRTでは、耳鳴りを「鳴っていても気にならない音」と認識するように訓練していくのです。
【治療】
TRTは、「カウンセリング」と「音治療」の2つの柱で成り立っています。
「音治療」